『ドラゴンヘッド』の望月峯太郎さんと、『ちいさこべえ』の望月ミネタロウさんは、同じ漫画家です。
読み方は、どちらも「もちづき・みねたろう」。
『東京怪童』の連載中に、名前の表記を漢字からカタカナへ変えました。
本人が語った理由は、自分に定着した漫画のイメージから踏み出し、違う描き方へ進みたいという思いでした。
二つの名前は、今も作品の書誌に残っている
講談社の『ドラゴンヘッド』第1巻では、著者名が「望月峯太郎」。
『東京怪童』第1巻では、「望月ミネタロウ」となっています。
同じ出版社の本でも、作品を探すと二つの表記に出会います。
表記が変わったのは、2009年の『モーニング』で『東京怪童』を連載していた時期です。
『東京怪童』は、新しい名義で単行本になった作品でもあります。
『万祝』のあと、定着した作品像から踏み出したかった
望月さんは、1985年に『バタアシ金魚』で連載を始め、その後『ドラゴンヘッド』や海の冒険を描く『万祝』などを発表しました。
後年の本人インタビューでは、『万祝』を描き終えた頃、とくに進む方向への違和感が強くなったと話しています。
望月さんは違うことをしたくなっていましたが、読者や出版社には、すでに望月作品のイメージがありました。
その枠にとどまらず、新たに始めるために、絵と名前を意識して変えたのです。
その方法で最初に取り組んだ作品が、『東京怪童』でした。
これまでの仕事を全否定する改名ではなかった
2015年の『ちいさこべえ』完結記念対談では、望月さんが改名についてもう一度語っています。
今まで歩いてきた道を全否定するのでなく、違う道を歩きたくなる時がある、という説明でした。

この対談で、望月さんは『ちいさこべえ』を原作付きの漫画にした理由も話しました。
自分だけでは突破できない壁を越え、変化したかったのです。
名前を変えたあとも、望月さんは新しい仕事の方法を試していました。
『ちいさこべえ』で試した、所作から伝える描き方
『ちいさこべえ』は、山本周五郎の小説『ちいさこべ』を現代の物語に描き直した漫画です。
望月さんは、人物の心情を、動作や持ち物、装いから想像してもらおうと考えました。
第1話の見開きでも、りつは後ろ向きに描かれ、茂次の顔はほとんど見えません。

望月さんは、原作の文章の行間にあるものを漫画で描きたかったと説明しています。
表情や台詞に頼らず、人物がどう振る舞うかを丁寧に描く表現です。
改名後の仕事には、そのような具体的な表現の変化もありました。
まとめ
2023年に収録された取材で、望月さんは創作の意欲の源を、そのとき描きたいと思うものだと話しています。
名前の変更も、すでに定着した作品のイメージから踏み出し、次に描きたいものへ向かうための節目でした。



コメント