藤田和日郎が『からくりサーカス』のアニメ構成に加わった理由――全36話で何を残したのか

TVアニメ『からくりサーカス』Blu-ray BOX vol.1ジャケット/吉松孝博。©藤田和日郎・小学館/ツインエンジン。 漫画家・作者
TVアニメ『からくりサーカス』Blu-ray BOX vol.1ジャケット/吉松孝博。©藤田和日郎・小学館/ツインエンジン。

藤田和日郎さんは、『からくりサーカス』のアニメを、物語の最後まで届けるために構成へ加わりました。
全36話という条件の中で、勝・鳴海・しろがねの成長と変化、そして結末に必要な話を、自分で選ぼうとしたのです。

原作は全43巻の長編です。
藤田さんは、好きな場面が省かれた読者の悲しみも分かっていました。
そのうえで、アニメを一つの完結した物語として楽しんでもらうことを重視しました。

途中で終えず、最後まで描くことを選んだ

藤田さんは2018年の公式寄稿で、自分が約9年間描いた8000ページの漫画を、全36回へまとめる難しさを説明しています。
それでも、初めて『からくりサーカス』を知る人にも楽しんでほしいと、構成に取り組んでいました。

翌年の本人インタビューでは、物語が始まり、終わることを自然な形だと考えていると話します。
36話あるのに、物語の途中で終えるのは惜しいと感じていました。
原作は2006年に完結しており、藤田さんは、今回が最後のアニメ化の機会かもしれないと感じていたそうです。

藤田和日郎/2019年の本人取材。撮影:相澤宏諒。
藤田和日郎/2019年の本人取材。撮影:相澤宏諒。 出典

藤田さんは、物語が途中で途切れ、続きを待つ形にはしたくなかったのです。
そのためには、長い原作のどの話を残すか、決める必要がありました。

勝・鳴海・しろがねが、結末へたどり着くための話

藤田さんが中心に置いたのは、最初に出会う勝、鳴海、しろがねの三人でした。
三人が大団円を迎え、カーテンコールへ向かうために、成長や変化、歴史の秘密、最後の選択を描く必要があると説明しています。

TVアニメ『からくりサーカス』Blu-ray BOX vol.1ジャケット/吉松孝博。©藤田和日郎・小学館/ツインエンジン。
TVアニメ『からくりサーカス』Blu-ray BOX vol.1ジャケット/吉松孝博。©藤田和日郎・小学館/ツインエンジン。 出典

その方針では、脇役の魅力的な話をすべて残すことはできませんでした。
藤田さんは、リーゼロッテとビーストの戦いや、人物ごとの細かなエピソードを好きな人が多いことも知っていました。
それらを不要な話だと言っているわけではありません。
原作では大切な話でも、36話の中で結末へたどり着くために、諦めるものがあったのです。

原作の連載中にも構成で苦労した藤田さんは、アニメの構成では、原作を描いていた時以上に頭を悩ませたと振り返っています。

取捨選択を、原作者の判断として引き受けた

藤田さんは、省略を惜しむ意見を、原作を愛している人の声だと受け止めていました。
放送前から、そうした意見が出ることも予想していたといいます。

だからこそ、原作者自身がアニメの話を選んだという事実を明らかにしておくことが大切だと考えました。
なぜその場面を省いたのか、自分が選んだ理由を説明できるからです。

ただし、藤田さんが一人でアニメの構成を完成させたわけではありません。
公式スタッフ表では、藤田さんと井上敏樹さんがシリーズ構成を担当し、西村聡さんが監督を務めています。
アニメーション制作はスタジオヴォルンです。

和田翔太プロデューサーの取材でも、藤田さんが最初に渡した構成案を、西村監督や井上さんと相談し、最終的な形へまとめたと説明されています。
残す話の方針を原作者が示し、チームでアニメの構成を作っていったのです。

TVアニメ『からくりサーカス』Blu-ray BOX vol.3ジャケット/吉松孝博。©藤田和日郎・小学館/ツインエンジン。
TVアニメ『からくりサーカス』Blu-ray BOX vol.3ジャケット/吉松孝博。©藤田和日郎・小学館/ツインエンジン。 出典

藤田さんには、『うしおととら』のアニメで一緒に仕事をしたスタッフへの信頼もありました。
2018年の寄稿では、省かれた話があっても、『うしおととら』の本筋の面白さが実現していたことに満足していると述べています。
『からくりサーカス』でも、限られた回数の中で面白い作品を届けようとしていました。

まとめ

『からくりサーカス』には、アニメで見たかったのに省かれた場面もあります。
藤田さんはその惜しさを承知したうえで、初めて見る人にも、三人の物語を最後まで楽しんでもらう道を選びました。
藤田さんが構成に加わったことは、省いた場面の理由を説明し、アニメとして届けたい面白さに責任を持つことでもあったのです。

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