青樹佑夜と天樹征丸の作風はどうつながる? 『ギフテッド』の能力と推理

天草那月と四鬼夕也が描かれたギフテッド第1巻表紙 樹林伸
『ギフテッド』第1巻。天樹征丸原作、雨宮理真漫画。©天樹征丸・雨宮理真/講談社。

『GetBackers―奪還屋―』の青樹佑夜と、『金田一少年の事件簿』の天樹征丸は、どちらも樹林伸のペンネームです。
能力バトルと推理漫画は、別々のジャンルに見えます。
その二つのつながりを見つけやすいのが、天樹征丸原作、雨宮理真漫画の『ギフテッド』です。
人殺しを見抜く高校生と、事件を推理する刑事が組むこの作品では、特殊能力と謎解きが一つの物語を動かしています。

別の作者名で読んでいた作品が、一人の原作者につながる

樹林さんは青樹佑夜、天樹征丸のほか、安童夕馬という名前でも原作を書いてきました。
安童夕馬名義の『サイコメトラーEIJI』も、特殊な能力を持つ少年と事件が関わる作品です。
名義を知ると、能力ものと探偵ものの間にも、同じ原作者が作ってきた物語のつながりが見えてきます。

『GetBackers』は綾峰欄人、『サイコメトラーEIJI』は朝基まさしが漫画を描いています。
同じ原作者でも、絵を描く漫画家は作品ごとに違います。
作品をまたいで見えてくるのは、能力者の相棒や事件の謎という、物語の組み立て方のつながりです。
青樹佑夜と樹林伸の関係を押さえたうえで『ギフテッド』を読むと、名義の異なる作品を一緒に考えられます。

犯人が分かっても、刑事の仕事は終わらない

『ギフテッド』の冒頭では、女性の転落死の現場へ刑事の天草那月がやってきます。
そこで高校生の四鬼夕也が、現場にいる男を指さし、殺したのはその男だと言います。
捜査が始まったところで、少年がいきなり犯人を言い当てるのです。

四鬼夕也が転落死の現場で殺した人物を指さすギフテッドの原作ページ
『ギフテッド』第1巻より。四鬼夕也が現場の男を指さす。©天樹征丸・雨宮理真/講談社。 出典

四鬼には、人を殺した者を見分ける目があります。
天草が理由を尋ねると、四鬼は人殺しであることが視えたと答えます。
誰が怪しいかを絞り込む段階で、四鬼の能力が大きな力になるのです。

四鬼夕也が天草那月に人殺しであることが視えたと説明する原作ページ
『ギフテッド』第1巻より。四鬼夕也が自分の目で分かったことを天草那月に話す。©天樹征丸・雨宮理真/講談社。 出典

ところが、四鬼が指した人物にはアリバイがあります。
四鬼の目で分かったことを、刑事が事件の証拠としてそのまま使うことはできません。
天草には、犯行がどう行われたかを突き止め、四鬼が指した男のアリバイを崩す仕事が残っています。

四鬼夕也が犯人のアリバイを崩すよう天草那月に求める原作ページ
『ギフテッド』第1巻より。四鬼夕也は天草那月にアリバイを崩すよう求める。©天樹征丸・雨宮理真/講談社。 出典

特殊能力の相棒と、謎を解く楽しさが合流する

『ギフテッド』の二人には、樹林さんの他の作品にも見られる要素が重なっています。
特殊能力を持つ人物が相棒と組むところには、『GetBackers』や『サイコメトラーEIJI』を思い出せます。
事件の仕組みを推理し、読者へ説明していくところには、『金田一少年の事件簿』とのつながりがあります。

『GetBackers』なら、特殊な力をどう組み合わせて依頼に応えるかが見せ場になります。

『ギフテッド』では、力で見つけた人物を、捜査と推理で追い詰めるところに見せ場が残ります。

能力の存在と、理屈で納得する謎解きが、一方を不要にせず組み合わされています。

樹林伸は、推理漫画以外にも謎と意外性を求める

インタビューに応じる樹林伸
樹林伸。早稲田大学の本人インタビューより。撮影:加藤甫。 出典

樹林さんは2019年の本人インタビューで、謎と意外性は恋愛漫画やサッカー漫画でも必要だと話しています。
本人のいう謎は、犯人探しだけに限られていません。
読者が予想する筋と、作者が用意する本当の筋を分け、その違いで意外性を生む方法を説明しています。

同じ取材では、経験したジャンルには作り方の見当がつく一方、自分は新しいことを試したくなる、とも語っています。
能力ものを読んだ後に推理ものを手に取ると、舞台も主人公も変わります。
その変化とともに、先を知りたくなる謎がどう置かれているかを見ると、別の作品へ進む楽しみが増えます。

まとめ

樹林さんの作品を作者名の違いごとに分けていると、能力ものと推理ものは離れて見えます。
『ギフテッド』は、以前の作品で楽しんだ特殊能力の相棒や謎解きが、違う形で組み合わさった物語として読めます。
別名義の作品を知っている読者には、初めて会う二人の活躍の中に、なじみのある面白さを見つけられる一作です。

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