小金井にとって紅麗は、自分を孤独から救ってくれた兄だった。
その紅麗のもとを離れ、小金井は柳を守る火影の仲間になる。
恩人への気持ちが消えたから寝返った、と考えると、この選択はうまくつながらない。
小金井が拒んだのは、紅麗との関係そのものではなく、柳を傷つける行いだった。

兄の言葉を信じていたから、約束を破る姿に失望した
小金井は、捕らわれた柳を気にかけていた。
紅麗から柳には何もしないと言われ、その言葉を信じる。
だが、柳が傷つけられ、小金井の信頼は裏切られる。
紅麗が命じたことなら何でも受け入れる、という態度を、小金井はここでやめた。
この失望には、紅麗が以前、小金井に見せた優しさが関わっている。
身寄りのない小金井が自分の命を絶とうとした時、紅麗は止め、「兄弟となろうぞ」と呼びかけた。
小金井は、冷酷な首領としての紅麗しか知らない部下ではない。
自分を救ってくれた紅麗を知っているからこそ、柳への扱いにも納得できなかった。
火影に加わる時、小金井は柳を守ることを掲げる。
これは、紅麗への恨みを晴らすために、強い組織へ移ったという選択ではない。
兄が守らなかった柳を、自分は守る側に立つ。
小金井は、誰についていくかだけでなく、何をするかも自分で選び始めている。
離れた後も、昔の関係を簡単には切れなかった
麗を抜けた小金井にも、紅麗の本心を知りたい気持ちは残る。
柳を守るために紅麗側と戦うことと、紅麗を見捨てることは、小金井の中で同じではなかった。
元相棒の木蓮との対戦にも、過去の関係を切り捨て切れない小金井の一面が出る。
小金井は木蓮への情につけ込まれ、だまし討ちで敗れる。
木蓮はさらに小金井を取り込み、水鏡との戦いで人質にした。
小金井に残った情を、木蓮は自分の勝利のために利用する。

小金井の優しさは、木蓮のような相手には隙になる。
相手の気持ちを信じようとする姿勢が、戦いでは不利に働くこともあるのだ。
紅麗についても、小金井は本当の気持ちを知ることを諦めなかった。
火影の一員として戦う小金井には、柳を守る目的と、兄を理解したい願いがともに残る。
紅麗への思いが最後まで残ることは、戦国時代へ帰る紅麗に、小金井が同行した結末にも表れている。
ただし、その結末を理由に、麗を離れた判断まで取り消したわけではない。
柳を守るために火影として戦った日々も、小金井自身が選んだものだ。

小金井は、紅麗を慕う気持ちを保ちながら、紅麗の行いを拒むことができた。
好きな人のすることを、すべて正しいと受け入れる関係から、自分の判断を持つ関係へ進んでいる。
柳を守るための離脱は、兄への思いを失った場面ではなく、兄の言葉を信じてきた少年が、自分の守りたい相手を選んだ場面なのだ。


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