『烈火の炎』風子と雷覇は、なぜ助け合った末に戦うのか

風子が描かれた『烈火の炎』の書影 烈火の炎
画像出典:安西信行『烈火の炎』小学館

風子の風神が本来の力を取り戻すのは、雷覇から核を受け取った時だ。
風子を何度も救い、力まで渡した雷覇が、最後にはその風神と戦う。
助けてくれた人を、自分の手で倒さなければならない。
風子と雷覇の対決には、強敵を倒すだけでは済まないつらさがある。

この戦いには、風神と雷神の因縁が重なっている。
だが、風子も雷覇も、魔導具の憎しみだけで戦っているわけではない。
風子には柳が、雷覇には紅麗がいる。
魔導具の因縁でぶつかる二人が、その戦いに大切な人への思いを賭けている。

風子が描かれた『烈火の炎』の書影
安西信行『烈火の炎』小学館

風子を強くしたのは、敵側にいた雷覇でもある

初めの風神には、中心となる核がなかった。
風子は小玉で力を使い、さらに鬼の爪の核を組み合わせて、風の爪を生み出す。
与えられた道具をそのまま振るうだけでなく、足りない部分を工夫で補って戦ってきた。

小玉を使う枝技には、強い力と引き換えに小玉を消費する制約があった。
使い切れば、そのままでは風神を使えなくなる。
そこで核を渡したのが、雷覇だった。
風子は彼の試験を経て、風神の本来の力を使えるようになる。

雷覇は麗の一員だが、風子にとっては、組織の名前だけで敵と割り切れる相手ではなかった。
森の城の罠で溺れかけた時も、双角斎の魔導具に囚われた時も、雷覇は風子を助けている。
力を得る過程そのものに、敵側の人物への信頼が育っているのだ。

紅麗に仕える雷覇
安西信行『烈火の炎』小学館

魔導具の因縁と、二人の忠義は同じではない

風神は虚空が作り、雷神は海魔が作った魔導具で、どちらにも意志がある。
対をなす二つの道具は、互いを壊そうとする。
風子と雷覇の対決には、作り手の時代から続く因縁が持ち込まれている。

一方で、風子と雷覇が守りたい相手は、今を生きる人間だ。
風子は柳を助けるために戦い、雷覇は紅麗への忠義を貫こうとする。
雷覇の忠義は、磁生や音遠とともに紅麗へ命を捧げると誓った関係の続きでもある。
二人の目的を、風神と雷神の敵意だけで説明することはできない。

だから風子は、雷覇への感謝を捨てて戦うのではない。
初めは彼との対決を拒むが、雷覇の覚悟を受け止め、全力で向き合う。
風子を助けてくれた優しさと、紅麗のために風子の前へ立つ厳しさは、どちらも雷覇のものだ。
風子を救ってきた雷覇が、今度は紅麗に尽くす覚悟を示している。

最後の風神は、風子一人の力で勝ったのではない

雷神は、雷覇の生命力を吸って雷を放つ。
強い力を出すほど使い手が削られるという危険があり、雷覇は風神の核で雷神を封じていた。
風子へ核を渡したことは、風神を完成させるとともに、雷神の封を解くことにもつながった。

最後の撃ち合いで、風子の風魂は雷神の降御雷に押される。
そこへ駆けつけた土門が、風子の体を支えた。
「一生支えてやる」という言葉は、その場で実際に風子を支える行動を伴っている。

風子に一生支えてやると伝える土門
安西信行『烈火の炎』小学館

土門と、風子をかばって死んだ緋水の力が加わり、風魂は雷神を破壊する。
風子は、自分の技を磨き、風神の核を取り戻してきた。
それでも最後を決めるのは、彼女一人で蓄えた力ではなく、彼女を支える人たちとの共闘だった。

何度も助けてくれた雷覇と戦い、今度は土門に支えられて勝つ。
雷覇は敗北後、風子を土門に託す。
風子が受けてきた助けは、強くなれば捨ててよいものとして描かれていない。
戦う相手と守る相手を自分で決めて進む風子のそばに、最後まで支える人がいる。
そこに、風神の力を手に入れるだけでは説明できない、この戦いの温かさがある。

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