鴉は蔵馬の髪を気遣い、好きだと言い、殺そうとする。
しかも、蔵馬に反撃されると、ますます気に入ったと口にする。
鴉にとって、相手を好きになることと、命を奪うことは結びついている。
殺す快感と、気に入った姿をそばに残すこと。
蔵馬に向けた言葉には、その二つの望みが表れている。
髪を気遣う手が、蔵馬の意思を無視している
決勝前の廊下で、鴉は蔵馬の背後に回り込み、髪の手入れについて話しかける。
武威が壁を殴った隙を使い、警戒していた蔵馬との距離を一気に詰めたのだ。

鴉は髪の傷みを気にしながら、蔵馬の顔に手を添えている。
言葉だけなら親切な助言にも見えるが、触れられた蔵馬は驚き、鴉へ反撃する。
鴉がどれほど親しげに接しても、蔵馬に歓迎されているわけではない。
鴉の関心は、蔵馬の気持ちを確かめることより、美しい髪や顔に触れることへ向いている。
反撃をかわした鴉は、蔵馬の冷静さと好戦的な面を挙げ、浦飯チームで一番好きだと告げる。
警戒され、反撃を受けても、鴉は蔵馬を気に入っていると語り続ける。
相手が拒んでいることを気に留めない接近なのだ。
気に入るほど、殺すことが楽しみになる
このとき鴉は、好きなものを殺すと気持ちが沈むと語っている。
そして、その感覚を快感だと続ける。
気持ちが沈むことまで、鴉には楽しみになる。
好意そのものが、殺したい気持ちを強くしている。

決勝では、妖狐の姿になった蔵馬が魔界のオジギソウで鴉を追い詰める。
そこから戻ってきた鴉は、蔵馬を気に入ったと告げた直後に「ますます殺したくなってきた」と言う。
手強さを見せた蔵馬への関心は、そのまま殺意にもつながる。
戦いを通じて相手を認める場面が、鴉の場合は、殺す楽しみを語る場面になっている。
そばに残したいのは、殺した後の美しい姿
さらに鴉は、人間の姿に戻った蔵馬を爆弾で痛めつけながら、いつまでもそばに置きたいと告げる。
その後に続くのが「頭だけはきれいなままで残してやるよ」という言葉だ。
ここで、髪を気遣っていた態度の意味もはっきりする。
鴉は蔵馬の姿を気に入っているが、命を守ろうとはしていない。
本人を殺した後も、気に入った部分を自分のそばに残そうとしている。
蔵馬がどう生きたいか、鴉をどう思っているかは、その望みに入っていない。
髪を傷めないことと、命を奪うことが、鴉の中では同時に成り立つ。
好きな相手を自分の手で殺し、好きな姿を手元に残したい。
鴉の「好き」が恐ろしいのは、蔵馬を気遣うような言葉さえ、その欲望を語る言葉になっているからだ。


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