『天』最終回のひろゆきは、なぜ不安定な暮らしに満足しているのか

可能な限り自分の心に沿おうと考える最終回のひろゆき 天 天和通りの快男児
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第18巻。

『天』の最終回で、ひろゆきは会社勤めをやめ、麻雀で暮らしている。
麻雀で大金を稼ぎ続けているわけではない。
収入には余裕がなく、世間から見れば定職にも就いていない。
それでもひろゆきは、この暮らしを自分で選んだと語り、満足している。
赤木との対話を経て変わったのは、麻雀でどこまで勝てるかよりも、どんな生き方を自分で選ぶかという、ひろゆきの判断だった。

麻雀に戻った後も、暮らしは楽ではない

東西戦の後、ひろゆきは天や赤木との才能の差を感じ、麻雀から離れていた。
麻雀で勝負を楽しむのは勝てる人だけだと考え、一流に届かない自分がその道で生きることを諦めていたのだ。
会社勤めの暮らしを選んだひろゆきにも、麻雀を捨てた悔しさは残っていた。

へこたれる人の気持ちが分からないと赤木に訴えるひろゆき
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第18巻。

最終回のひろゆきは、麻雀を教える仕事の収入を軸にし、ときには雀荘から頼まれた勝負を引き受けている。
ただし、その依頼は多くなく、暮らしは楽ではない。
最終回が描くのは、ひろゆきが麻雀の頂点へ上り詰めた姿ではなく、麻雀を仕事にして日々を暮らす姿だ。

赤木は、ひろゆきに成功を目指すなと言ったのではなかった。
成功できるかどうかを思い悩み、やりたいことへの熱を失ってしまうほうが問題だと話していた。
赤木が認めたのは、一流に届かないとしても、麻雀で生きたい気持ちを捨てなくていいということだった。

熱い三流なら上等よという赤木の言葉を聞くひろゆき
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第18巻。

ひろゆきは、暮らしを自分で選んだと言えるようになる

以前のひろゆきは、人生で失敗し、人から軽く見られることを恐れていた。
それなら今の会社勤めのほうがまともだ、と赤木に話している。
麻雀を続けたい気持ちがあっても、世間からどう見られるかが、その気持ちを押しとどめていた。

最終回でも、世間からの評価が良くなったわけではない。
定職のない雀ゴロもどきという、周囲からの見られ方が示される。
しかし今は、その評価を理由に、自分が選んだ暮らしを否定しない。
何の迷いもなく満足だと、ひろゆきは語っている。

自分で選んだ麻雀の暮らしに満足し、自分の心に沿おうと考えるひろゆき
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第18巻。

ひろゆきは、赤木を思い、人はいずれ死ぬのだから、可能な限り自分の心に沿おうと考える。
赤木を説得しに行った夜に受け取った言葉が、今度はひろゆき自身の暮らしに表れている。
赤木のように一流として勝ち続けることを、自分の再出発の条件にはしなくなった。

ひろゆきの「満足」は、金銭面の不安定さがなくなったという話ではない。
楽ではなくても、麻雀を続けたい自分の気持ちに沿って生きている、その選択への満足だ。
かつては勝てる見込みがないからと麻雀を離れたひろゆきが、今は麻雀を仕事にして暮らしている。
以前は避けた道を、自分の意思で選び直した。
最終回のひろゆきは、その変化を「満足」という言葉で伝えている。

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