『天』の最終回で、ひろゆきは会社勤めをやめ、麻雀で暮らしている。
麻雀で大金を稼ぎ続けているわけではない。
収入には余裕がなく、世間から見れば定職にも就いていない。
それでもひろゆきは、この暮らしを自分で選んだと語り、満足している。
赤木との対話を経て変わったのは、麻雀でどこまで勝てるかよりも、どんな生き方を自分で選ぶかという、ひろゆきの判断だった。
麻雀に戻った後も、暮らしは楽ではない
東西戦の後、ひろゆきは天や赤木との才能の差を感じ、麻雀から離れていた。
麻雀で勝負を楽しむのは勝てる人だけだと考え、一流に届かない自分がその道で生きることを諦めていたのだ。
会社勤めの暮らしを選んだひろゆきにも、麻雀を捨てた悔しさは残っていた。

最終回のひろゆきは、麻雀を教える仕事の収入を軸にし、ときには雀荘から頼まれた勝負を引き受けている。
ただし、その依頼は多くなく、暮らしは楽ではない。
最終回が描くのは、ひろゆきが麻雀の頂点へ上り詰めた姿ではなく、麻雀を仕事にして日々を暮らす姿だ。
赤木は、ひろゆきに成功を目指すなと言ったのではなかった。
成功できるかどうかを思い悩み、やりたいことへの熱を失ってしまうほうが問題だと話していた。
赤木が認めたのは、一流に届かないとしても、麻雀で生きたい気持ちを捨てなくていいということだった。

ひろゆきは、暮らしを自分で選んだと言えるようになる
以前のひろゆきは、人生で失敗し、人から軽く見られることを恐れていた。
それなら今の会社勤めのほうがまともだ、と赤木に話している。
麻雀を続けたい気持ちがあっても、世間からどう見られるかが、その気持ちを押しとどめていた。
最終回でも、世間からの評価が良くなったわけではない。
定職のない雀ゴロもどきという、周囲からの見られ方が示される。
しかし今は、その評価を理由に、自分が選んだ暮らしを否定しない。
何の迷いもなく満足だと、ひろゆきは語っている。

ひろゆきは、赤木を思い、人はいずれ死ぬのだから、可能な限り自分の心に沿おうと考える。
赤木を説得しに行った夜に受け取った言葉が、今度はひろゆき自身の暮らしに表れている。
赤木のように一流として勝ち続けることを、自分の再出発の条件にはしなくなった。
ひろゆきの「満足」は、金銭面の不安定さがなくなったという話ではない。
楽ではなくても、麻雀を続けたい自分の気持ちに沿って生きている、その選択への満足だ。
かつては勝てる見込みがないからと麻雀を離れたひろゆきが、今は麻雀を仕事にして暮らしている。
以前は避けた道を、自分の意思で選び直した。
最終回のひろゆきは、その変化を「満足」という言葉で伝えている。


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