蔵前との麻雀勝負の最後に、銀二は現金五百億円と、代議士五十八人分の借用書を要求する。
借用書に記された債務は、合計二千五百億円に上る。
この借用書が重要なのは、返済金を受け取れるからだけではない。
蔵前は政治家の借金を使って、自分の企業に有利な政策を求めていた。
銀二が奪おうとしていたのは、その政治家たちを動かすための材料だった。
蔵前は、借金を政策で返させていた
蔵前は政治家をギャンブルに招き、負けた議員に低金利の借用書を書かせる。
議員が企業に有利な政策に応じれば、蔵前は返済を請求しない。
金を借りた議員は、政策で蔵前に利益を返すことになる。
この関係では、借用書を持つ蔵前が議員へ要求できる。
議員は借金を背負っているため、蔵前の希望を無視しにくい。
貸した金を回収する代わりに、蔵前は政治の場で自分の企業を助けさせていたのだ。
銀二が蔵前との勝負に向かった目的にも、この関係がある。
銀二には、誠京への借金で縛られている議員のうち、協力させたい者がいた。
勝負で借用書を得ることは、その議員たちへ働きかける足場を得ることだった。
最後の交渉で、銀二は現金と借用書を求める

銀二は、チーをすれば蔵前へもう一度ツモを回せる状況で、蔵前にチーを止める権利を売る。
森田への役満祝儀を恐れている蔵前には、対局をここで終わらせたい理由がある。
銀二は、その恐怖を交渉に使った。
銀二が最初に提示した額は三千億円だった。
蔵前側が企業として払える額には限界があると拒むと、銀二は現金五百億円と、二千五百億円分の政治家の借用書を求める。
蔵前は、この条件を受け入れる。
銀二はその場の支払いを得ると同時に、当初狙っていた借用書も手にする。
麻雀の勝負は、誠京が議員を従わせていた関係にまで及んでいた。
最後のチーをめぐる駆け引きは、大三元を和了せずに蔵前を追い詰めた仕組みで詳しく扱っている。
借用書を得た銀二は、伊沢へ連絡する

銀二と伊沢敦志の付き合いは、蔵前との勝負より前に始まっている。
森田が伊沢と対面した仕手株編でも、銀二の仕事は政界とつながっていた。
誠京麻雀で勝った銀二は、伊沢に借用書を得たことを報告し、選挙資金の援助も申し出る。
銀二は、資金に加えて、議員へ働きかける材料も伊沢に示したことになる。
銀二が伊沢との協力に求める見返りも、後に明らかになる。
銀二は、銀行による企業融資の審査を民間に委ね、その業務を自分が引き受ける構想を語る。
銀二は伊沢に制度の実現を求め、自分は企業へ金が流れる経路を押さえようとしている。

蔵前が金を貸して得ていたのは、政策に口を出せる立場だった。
銀二が借用書を奪うことにも、その力を自分の仕事に生かす狙いがある。
麻雀で得た報酬を持って伊沢へ連絡する銀二の行動には、一つの勝負を次の大仕事へつなげていく姿が表れている。


コメント