森田鉄雄が西条進也と戦う青天井ポーカーでは、強い役を作っても、カードを開く前に負けることがある。
相手が積んだ賭け金を用意できなければ、そこで勝負から降ろされるからだ。
西条は、このルールで資金の少ない相手を追い込んでいた。
森田は初戦で同じ手を西条に返すが、再戦では、現金の額だけで押し切れなくなる。
手札を比べる前に、金を積めるかが問われる
「青天井」とは、賭け金に上限がないことだ。
西条たちの勝負では、相手の賭け金についていけなくなった者が負ける。
手元の金だけで最後まで勝負できる保証はなく、金が足りなくなれば、決められた時間内に調達しなければならない。

喫茶店で働く美緒とその友人たちが三十二万円まで積んだところで、西条は一千万円を出す。
美緒たちにとっては、手札の良し悪しを考える以前に、支払いが続けられない額だった。
西条は、少額のうちは相手を勝負につき合わせ、途中で相手の手持ちを超える金を積む。
相手がいい手を持っていても、その手で勝負させずに終わらせられる。
西条には、手札を盗み見るイカサマもある。
相手の金が尽きれば、カードを比べずに勝つ。
相手が金を用意できた場合も、手札を知ったうえで勝負できる。
資金の差とイカサマが、別々の方法で西条の有利を支えている。
森田の初勝利は、西条を同じルールで降ろしたもの
美緒たちの勝負に入った森田は、「ヒジの高さまで」金を積むと告げる。
西条が持っている現金を超える額を、森田が目の前に置く。
今度は西条のほうが、制限時間内に金を用意できない側になる。

森田は、西条より強い役を見せて勝ったわけではない。
西条が美緒たちを負かそうとした、現金で相手を降ろす方法を、そのまま西条に使った。
美緒たちを支払い不能にした西条が、森田を前にすると、自分も同じように負ける。
森田の登場で変わったのは、カードの強さを比べるルールではなく、金を積み続けられる側がどちらかだった。
再戦では、資金の多い西条をどう止めるか
再戦に備え、西条は資金を増やす。
勝負の途中には、西条側の松沼と、森田側の船田・安田も資金を支える。
森田が初戦で見せた現金の力は、今度は西条も備えている。

森田側が用意した金は十億円で、西条側は二十億円まで出せる。
最後まで同じように積み続ければ、先に金が尽きるのは森田側だ。
森田たちには、西条が自分の資金で押し切れると確信する前に、積み合いを止めさせる必要がある。
そこで安田は、残りの金が減っても、余裕のある態度で二千万円ずつ積む。
西条は森田側の限度を見誤り、自分の金でも足りないのではないかと恐れる。
森田側が実際に持っている金と、西条から見て持っていそうな金が食い違う。
再戦では、その食い違いが、森田側の資金の弱さを補っていた。

安田の振る舞いについては、森田を支えた安田の冷静さでも詳しく扱っている。
降りることと、コールすることは何が違うのか
勝負から降りれば、その勝負で既に賭けた金を失い、カードの強さで取り返す機会もなくなる。
コールは、賭け金を相手とそろえて、手札の勝負を受けることだ。
そろえるために追加の金が必要なら、その分も出さなければならない。
コールして負ける場合は、その追加分まで失うので、降りて負ける場合と、いつも同じ損失になるわけではない。
ただし、森田と西条の再戦の最後には、通常の降り方とは違う申し出がある。
九億円まで積んだ西条は、青天井の約束をやめ、そこで手札を比べるか、違約金の一億円を受け取って終えるかを、森田に迫る。
西条は自分の負けを認めて、賭け金を全部渡すと言ったわけではない。
これ以上の積み合いを止め、手札で決着をつけようとしている。
森田はコールを選ぶ。
この時点で西条は、イカサマで得た情報から、森田の手は役なしだと思っている。
西条には、手札を開けば勝てるという見込みがあった。
しかし、実際に森田が開いた手はフラッシュで、西条のツーペアを上回る。
金の積み合いをしのいだ森田は、最後にはカードの強さでも勝っている。
青天井ポーカーでは、相手が用意できない額を積めば、手札を開かせずに勝てる。
その現金の力を初戦で使った森田は、再戦では、西条に森田側の資金を読み違えさせ、手札についての西条の確信も崩す必要があった。
札束が積み上がる場面と、最後にカードを開く場面は、一つの勝負の中にある別の関門だ。
森田の逆転は、両方を越えて初めて成立する。


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