『銀と金』銀二はなぜ、森田が苦戦した有賀を制圧できたのか

裏社会で銀王と呼ばれる平井銀二 銀と金
『銀と金』福本伸行・第1巻、第1話。

森田を瀕死に追い込んだ有賀研二を、駆けつけた銀二はあっという間に制圧する。
金と権力の駆け引きに強い男が、殺人鬼との闘いでも圧倒的な力を見せる場面だ。
二人の差は、銀二が有賀の攻撃を見抜く言葉と動きに表れている。
森田が不意を突かれたのに対し、銀二は刃物が届く範囲を捉え、有賀の腕を押さえて反撃する。

裏社会で銀王と呼ばれる平井銀二
『銀と金』福本伸行・第1巻、第1話。

森田を傷つけたのは、闘いが終わったと思った隙だった

森田は、有賀に向かっていく度胸も、反撃する力も持っていた。
組員たちが有賀から逃げようとする中で踏みとどまり、反撃でナイフを奪い、停戦を持ちかけさせている。
有賀に何もできず、一方的に負けたわけではない。

ところが、有賀が去ると、森田は玄関を施錠して気を緩める。
森田が洗面所で顔を洗っている間に、有賀は背後へ忍び寄る。
森田は鏡の中に有賀を見つけるが、すでに刃物を構えられている。
さっきまで反撃していた森田も、無防備なところを襲われれば、同じようには闘えない。

森田の背後で二本の刃物を構え、鏡に映る有賀
『銀と金』福本伸行・第3巻。

森田が反撃して有賀を退かせたことと、その後も身を守れたかは別の問題だ。
銀二との違いを考えるときも、最後に負けたという結果だけで、森田に度胸や力がなかったとは言えない。

銀二は、有賀の刃物が届く範囲を見ている

銀二が向き合うのも、両手に刃物を持つ有賀だ。
銀二は有賀の攻撃をかわし、腕を取って背後へ回る。
そのまま腕を折り、顔面への膝の一撃で制圧する。
ただ刃物を恐れずに飛び込むのではなく、有賀の動きを捉え、反撃できる位置へ移っている。

銀二の台詞も、その冷静さを示している。
銀二は、有賀の右手の刃物について、どれだけ振っても自分のいる範囲には届かないと言う。
有賀が凶器を持っているというだけでひるまず、実際にどの攻撃が届くのかを捉えているのだ。
銀二は、有賀の攻撃を見抜く判断力と、その判断どおりに動く技量の両方を備えている。

森田にも、闘っている最中には有賀へ反撃する力があった。
しかし、有賀を退かせた後、森田は警戒を解いてしまった。
二人の違いは、勇敢かどうかだけではなく、有賀から攻撃される状況をどう捉え、対処したかにもある。

銀二の強さだけで、森田の生還は説明できない

銀二は有賀を倒した後、森田を病院へ運ぶ。
銀二の制圧が森田の救命につながったのは、森田がとどめを刺される前に現場へ着けたからでもある。
銀二が駆けつけられた背景には、原田が組員たちと連絡を取れなくなり、異変が分かったことがある。

さらに銀二は、現場へ向かう途中の信号で一度も止まらなかったことを、森田の強運として語る。
有賀を倒す力は銀二のものでも、その銀二が間に合ったことには、森田の運もあると銀二は見ている。
森田は自力で反撃したが、最後まで自力で生き延びたわけではない。
銀二の救出と、到着を遅らせなかった偶然が重なって、森田は命をつないだ。

有賀を制圧する場面で、銀二は森田との力の差をはっきり見せる。
それでも、救った銀二自身は森田の強運を認めている。
有賀を倒した銀二の技量に加えて、森田の運も認められるところが、この救出の面白さである。

この記事もおすすめ

コメント

アクセス解析について
タイトルとURLをコピーしました