カイジが保険証を取りに実家へ戻ると、母の初江との会話が思いもよらないところで逃亡を危うくする。
話したい母と、盗聴を恐れて声を出せないカイジ。
二人のやり取りは噛み合わない。
ところが、団地から抜け出す方法を見つけるのも初江だった。
初江は終始、追っ手の都合よりも息子のことを考えている。
カイジが監視の場所として見ていた団地を、初江は頼れる人のいる場所として知っていた。
母と息子は、同じ家を違う場所として見ている
カイジにとって、実家の部屋は帝愛に盗聴されている危険な場所だ。
姿を変えて入ってきた以上、母にも大声で自分の名を呼んでほしくない。
だが初江は、久しぶりに帰ってきた息子と話したい。
最初の再会で母の口をふさぐカイジには、まず声を聞かれないことが必要だった。
初江は息子の求めに従うが、なぜそこまでしなければならないのかはまだ知らない。

カイジは帝愛との関係を会社の話に置き換えて母に説明する。
初江はその説明を、息子が勤め先で問題を起こした話として受け取る。
息子を案じているからこそ助言するのだが、カイジが恐れている追っ手の実態とはずれる。
初江の心配が間違っているというより、カイジが肝心な情報を母に渡していない。

危うい電話で、母の反応は追っ手の想定も外した
帝愛の盗聴担当者は、カイジを装って実家へ電話する。
初江は本物のカイジがそばにいると言ってしまい、カイジを凍りつかせる。
カイジには、いちばん聞かれたくない一言だ。

しかし初江は、そのまま偽の息子を叱りつける。
盗聴担当者は電話を切り、見張り班にカイジの在宅を伝えない。
初江の発言が計算された罠だったとはいえない。
カイジには危険な失言でも、相手にとっては本当に本人がいるなら言わないはずの言葉に聞こえた。
親子のやり取りを自分たちの常識で測ったことが、帝愛の判断を鈍らせた。

危機を越えてから、カイジは初江も追っ手に狙われかねないと伝える。
初江も息子と一緒に追っ手へ対処しようとする。
それでも母は、顔を見せないまま去ろうとする息子を心配する。
逃亡の手順だけで考えるカイジと、息子の体まで気にかける初江の違いは残ったままだ。

母が知っていたのは、団地で頼れる人のことだった
団地を監視され、カイジは風呂場に身を潜める。
初江はそのそばで涙を流す。
カイジには、久しぶりに帰った自分がまた母を悲しませているように見える。
だが初江は、ただ引き止めているのではない。
息子を外へ出すための案を考えていた。

初江の案は、団地の向かいに住む幼なじみ・保を頼ることだった。
カイジは保からバイクを借り、いつもフルフェイスのヘルメットをかぶる保のように団地を出る。
保の母・奈々江も、カイジが入るときに使った変装を引き受け、帝愛の注意をそちらへ向ける。



カイジは一人で変装することも、追っ手の動きを読むこともできた。
それでも、保の普段のバイク姿や、頼めば動いてくれる二つの家族を、脱出の手として見ていなかった。
初江は帝愛の監視に詳しいから勝ったのではない。
誰がこの団地に住み、誰に声をかけられるかを知っていたから、カイジの考えつかなかった道を開いた。

まとめ
実家では、母の関心がカイジの逃亡計画を乱した。
だが息子をよく知り、近所ともつながっているからこそ、初江は帝愛の知らない協力者を見つけられた。
初江の涙の後に脱出案が明かされると、息子をそばに置きたい気持ちだけでなく、逃がすためにその手を離す決意も見えてくる。
カイジが取りに帰ったのは保険証だったが、団地から抜け出せたのは、母が教えてくれた顔の見える関係を頼ったからだった。


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