『カイジ』はなぜ仲間の命を賭けたのか? チャンとマリオが選んだ勝負

カイジ、チャン、マリオが勝負に臨む原作の場面 カイジ
画像出典:『賭博堕天録カイジ ワン・ポーカー編』/福本伸行・講談社

チャンとマリオを救うために大金を払ったカイジが、今度は二人の命をワン・ポーカーに賭ける。
救った相手を自ら危険にさらすのは、矛盾して見える。
ただし、カイジが二人を勝手に勝負へ引き込んだわけではない。
二人が自分の命を差し出したことと、その決断を受けたカイジがどう戦ったかを分けて読む必要がある。

助けたのはカイジ、再戦を選んだのは二人

和也の「救出」ゲームで、カイジはチャンとマリオの命を救うため約7000万円を支払った。
その時にカイジが賭けたのは自分の金だ。
二人に次の勝負へ参加するよう求めたわけではない。

やがてワン・ポーカーでカイジが赤ライフを失い、処刑されかける。
チャンとマリオは和也に申し出て、自分たちの命を赤ライフに換え、カイジへ託した。
カイジが恩返しを求めたのではなく、二人自身が申し出たのだ。
カイジを救うために二人が踏み出し、カイジは勝負へ戻った。

カイジを救うためチャンとマリオが命を差し出したことを語る場面
『賭博堕天録カイジ ワン・ポーカー編』/福本伸行・講談社

カイジ自身も、以前なら賭けられなかった

カイジは後に、二人が命を差し出す前の自分なら、その命を賭けられなかったと和也に話す。
自分が救った相手だから、自分の判断で命を使ってよいとは考えていない。
チャンとマリオが死の危険を承知で勝負を望んだことが、カイジの判断を変えた。

チャンとマリオが自ら飛び込んで命を託したと語るカイジ
『賭博堕天録カイジ ワン・ポーカー編』/福本伸行・講談社

それでもカイジが安全な手だけを選んだわけではない。
二人の赤ライフを預かって臨んだ勝負で、カイジは弱い「2」を出し、和也を降ろすためのブラフを仕掛けた。
和也が勝負を受ければ、三人とも死にかねない一手だった。

二人の申し出を受けたとしても、カイジのブラフは失敗すれば三人を殺す危険な選択だった。
ただ、この危険をカイジ一人の思いつきとして語ると、命を託した二人の覚悟も消えてしまう。
チャンは後に、申し出た時点で危険を引き受けていたと話している。

和也に追い込まれた最後の勝負は、最初とは違う

終盤、カイジは取り戻した通常のライフを積み、さらに自分の赤ライフまで賭ける。
和也が賭け金を上げると、カイジはチャンかマリオの命も差し出さなければ勝負を続けられなくなる。
この場面では、二人はカイジの席から離れている。
二人が最初に赤ライフを差し出した時とは、危険が迫る形も、その場の反応も違った。

和也の追加の賭けにチャンとマリオが動揺する場面
『賭博堕天録カイジ ワン・ポーカー編』/福本伸行・講談社

カイジは和也に、この勝負はもともと自分と和也の二人で始めたものだと返す。
和也は、カイジが降りれば仲間を巻き込まずに済むと突きつける。
しかし、その時点でカイジ自身の命も賭けられている。
仲間を守るために降りるという選択も、カイジにとっては自分の死につながる。

チャンとマリオの命を賭けることを巡りカイジと和也が言い合う場面
『賭博堕天録カイジ ワン・ポーカー編』/福本伸行・講談社

ここで大切なのは、最初に二人が赤ライフを差し出した事実だけで、最後の賭けまで決まったことにしない点だ。
マリオは、カイジが降りるくらいなら自分も賭けてほしいと伝える。
チャンもカイジの確認に応じる。
二人の意思を聞いた後に、カイジはさらに賭けると決める。

マリオがカイジに自分の気持ちも一緒だと伝える場面
『賭博堕天録カイジ ワン・ポーカー編』/福本伸行・講談社
チャンとマリオの言葉を受けてカイジが覚悟を決める場面
『賭博堕天録カイジ ワン・ポーカー編』/福本伸行・講談社

まとめ

カイジが二人を救ったことは、二人の命を賭ける権利を得たことではない。
最初に命を差し出したのはチャンとマリオ自身であり、最後の局面でも二人はカイジへ意思を伝えた。
一方で、実際に札を出し、三人の生死を左右するのはカイジだ。
仲間の覚悟があるからこそカイジは危険な勝負へ踏み出せるが、その覚悟を預かる重さまでなくなりはしない。
命を救った関係が、そのまま命を預け合う関係へ変わる。
ワン・ポーカーで三人が結んだのは、安心できる友情ではなく、互いの選択が互いの生死に届く関係だった。

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