望月ミネタロウはネームで何に時間をかける?読む速さと場面の「間」

ちいさこべえの人物が描かれた総特集望月ミネタロウの書影 望月ミネタロウ
『総特集 望月ミネタロウ』/河出書房新社。

望月ミネタロウさんがネームに時間をかけるのは、話の筋だけでなく、読者が読む速さや、次の場面へ移る前の間まで考えているからです。
ネームは、原稿を描く前に、話の流れやコマの配置を組み立てる下書きです。
望月さんは、原稿の作画に取りかかるぎりぎりまで、その構成を考えていると話しています。

読む速さと、場面が切り替わる前の間を作る

『総特集 望月ミネタロウ』の本人インタビューの公開抜粋では、ネームで話を考える以外に何をしているのかが語られています。
望月さんが挙げるのは、読者が読むスピードや、次の場面へ移る前に息を整えるための間です。
その読み方を考えながら、ページの配置やコマ割りを作っています。

望月ミネタロウの写真を掲載したロングインタビューの扉ページ
『総特集 望月ミネタロウ』ロングインタビューの扉ページ/河出書房新社。 出典

望月さんは、この作業を、映画の撮影後に仕上げる工程である「ポストプロダクション」にたとえています。
漫画では、原稿の作画に入る前のネームに、その調整が入っているのです。
望月さんのネームに入る絵は、自分だけが分かる程度だといいます。
絵の描き込みが簡単でも、読むときの流れは細かく考えられていました。

工程に何日かけるかは、決めていない

2023年の取材では、エッセイ漫画『没有漫画 没有人生』のネーム、下絵、ペン入れ、仕上げの時間配分を尋ねられています。
望月さんの答えは、配分は決まっていない、というものでした。
ネームをぎりぎりまで考え、原稿に取りかからなければならないところまで続けるためです。

歩く漫画家が描かれた没有漫画没有人生第1巻の書影
『没有漫画 没有人生』第1巻/望月ミネタロウ、小学館。 出典

ネームの後の作業は、あまり記憶に残っていないことも多いと話しています。
工程ごとに一定の日数を割り振っていたわけではありません。

ネームが終わると、後の作業は比較的気楽になる

同じインタビューの続きで、望月さんは、制作の中でいちばん嫌いなのはネームだと話しています。
悩んでいるのは、読者にどう話を理解してもらうか、どう面白く読んでもらうかということです。
ネームが終われば、あとの作業はあまり悩まず、比較的気楽に取り組めると振り返っています。

読む人の体験を考える姿勢は、作品についての本人の説明にも表れています。
2025年の本人取材では、『ドラゴンヘッド』で人物の視点を守り、外の世界の事情を読者に先に知らせなかったと話しました。
読者は人物が知っている範囲で、状況を確かめていくことになります。

暗いトンネルで大きな瓦礫を前に立つドラゴンヘッドの人物
『ドラゴンヘッド』第1巻の一場面/望月峯太郎、講談社。 出典

『ドラゴンヘッド』では、トンネルの瓦礫が見えても、その先の状況はまだ分かりません。
読者に何を知らせるかを選ぶ描き方の話からも、完成した絵だけでなく、読者がどんな順番で作品を体験するかに目を向けられます。

まとめ

望月さんがネームで悩んでいるのは、描きたい話を、読者が理解して面白く読める形にすることです。
ネームの後は比較的気楽になるという本人の話から、作画へ入る前に、読み方をどこまで決めようとしているのかが伝わってきます。
コマを追いながら感じる速さや、一息つく間にも、作者が時間をかけて組み立てた仕事があります。

この記事もおすすめ

コメント

アクセス解析について
タイトルとURLをコピーしました