『カイジ』限定ジャンケンは、なぜ「あいこ」だけで終わらないのか?

船井のあいこ作戦を聞くカイジ カイジ
『賭博黙示録カイジ』第7話「火蓋」/福本伸行・講談社

船井がカイジに持ちかけた作戦は、理屈だけなら間違っていない。
二人で同じ札を出し続ければ、星を失わずにカードを使い切れる。
それなら、なぜ船内では星の奪い合いが始まるのか。
船井の計算が正しくても、二人が同じ利益を求め、最後まで約束を守るとは限らない。

あいこで守れるのは、まず生還の条件

限定ジャンケンでは、時間内にカードを使い切り、星を三つ以上残せば生き残れる。
あいこならカードは一枚減るが、星は動かない。
星を三つ持つ二人が十二回とも同じ札を出せば、互いに条件を満たせる。
船井の提案は、存在しない抜け道をでっち上げた話ではない。

限定ジャンケンの勝利条件を話す利根川
『賭博黙示録カイジ』第5話「遊戯」/福本伸行・講談社

船井は、星を増やす勝ち方より、星三つのまま生き残る道をカイジに勧める。
その場のカイジには魅力的な話だ。
相手が約束を守れば、運任せの勝負で星を減らす危険を避けられる。

十二回のあいこをカイジに提案する船井
『賭博黙示録カイジ』第7話「火蓋」/福本伸行・講談社

早く降りるか、余分な星を狙うか

カイジは、船で借りた金に高い利息がつくことを心配する。
これに対し船井は、あいこで早く勝負を終えれば、利息を少なく抑えられると説明する。
船井の作戦は、生還だけでなく、借金を増やしすぎない点でも筋が通っている。

船内で借りた金の利息を話す船井
『賭博黙示録カイジ』第8話「裏技」/福本伸行・講談社
早く十二回の勝負を終える利点を説明する船井
『賭博黙示録カイジ』第8話「裏技」/福本伸行・講談社

一方、あいこを重ねても、星は増えない。
余分な星を手に入れれば、星が足りない参加者へ売って金に変える道がある。
早く生還することと、危険を冒して星を増やすことは、別の選択だ。
船井は安全な道を勧めながら、実際にはカイジの星を狙った。

約束した札を出す保証はない

実際に二人の勝負は、しばらくあいこが続く。
しかし船井は途中で違う札を出し、カイジの星を一つ取る。
その後、船井は手順を間違えたように振る舞い、次はカイジが勝てるように見せかける。
カイジが見ていないところで二枚重ねの札を入れ替え、さらに星を奪った。

船井との勝負であいこを重ねるカイジ
『賭博黙示録カイジ』第8話「裏技」/福本伸行・講談社
二枚重ねの札でカイジを欺く船井
『賭博黙示録カイジ』第8話「裏技」/福本伸行・講談社

あいこの作戦が数学的に間違っていたわけではない。
二人が協力すれば通れる道は、確かにあった。
しかし札は各自が選ぶ。
相手が途中で勝ちに来れば、あいこを信じた側だけが星を失う。

限定ジャンケンは、参加者に裏切りを命じるゲームではない。
協力して生き残る方法を残したまま、余分な星を金に変える道と、相手の星を奪える仕組みも置いている。
船井の提案が怖いのは、嘘の作戦だからではない。
正しく機能する作戦を語った本人が、その約束を守らなくても得をできることにある。

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