和月伸宏さんは、人物を大きく描くことと、読者が迷わずページを読めることを両立させようとしています。
長身の人物に合わせて縦長のコマばかりを並べると、画面が窮屈になる。
そこで横長のコマを使い、台詞を読む視線の動きも整えると、本人は集英社の対談で話しました。
さらに、見開きのどこで読者の目が一度止まるかまで考えています。
長身の人物が多いから、横長のコマで広がりを作る
対談相手の漫画家・中田貴大さんは、和月さんのコマ割りについて、大きな背景に枠線を重ねるなど、コマの大小が印象的だと語っています。
和月さんが挙げた理由の一つは、描く人物に長身の者が多いことでした。
全身を収めようとして縦長のコマが続くと、ページ全体が狭く感じられる。
和月さんは、その窮屈さを和らげるために横長のコマを置くと説明します。
和月さんは、大きく見せたい人物と、ページを開いたときの広がりを一緒に考えています。
『るろうに剣心』第1巻のこのページでは、上段で剣心と薫をそれぞれ大きく見せ、下段には横に長いコマが続きます。
人物の見せ方とコマの形が、一ページの中で切り替わっていることが分かります。

フキダシは「誰が、いつ話したか」を伝える道具
和月さんは、横長のコマの読みやすさには冨樫義博さんの漫画からの影響が強いとも話しています。
台詞が多くても横長のコマなら視線を動かしやすく、縦長のコマに縦長の台詞を置くと、目が上下に忙しく動くという説明です。
和月さんが気にするのは、文字を読み終える速さだけではありません。
フキダシの位置を考えないと、どの人物が、どのタイミングで話したのかが伝わりにくくなると言います。
絵は迫力があるのに会話の順番を読み返さなければならない、という状態を避けるためのコマ割りです。
一ページに一つ、見せたい絵を置く
見せ場を作る方法として、和月さんは若手作家に、まず一ページに一コマ、見せたい絵を決めることを勧めました。
表情でも全身でもアクションでもよく、残った場所に他のコマを配分します。
『るろうに剣心』第17巻のこのページでは、上部に大きな表情があり、下部には別の人物の顔が大きく置かれています。
小さなコマやフキダシも、その間で会話を運びます。
完成した紙面を見ると、大きく見せる場所と、台詞をつなぐ場所の違いが確かめられます。

見開きでは、ページの境目にも目が止まる
和月さんは、ページをめくった直後の最初のコマに強い絵を置く「めくり」だけを考えているわけではありません。
右ページの最後のコマから左ページの最初のコマへ移るときも、読者の意識は一瞬空くと話しています。
その短い間を、次の展開への引きに使えるというのです。
本人が重要だとするのは、見開きの右ページと左ページ、それぞれの右上と左下です。
一ページ単位でも、読み始める右上と、読み終わる左下を意識する。
ページをめくる瞬間だけでなく、二ページを読み進める途中の区切りにも強い場面を置けます。
まとめ
和月さんのコマ割りには、絵を大きく見せたいという狙いと、台詞や出来事を順に受け取ってほしいという狙いがあります。
横長のコマ、フキダシの位置、見開きの四隅は、その両方のための選択です。
大きな一コマが印象に残るのは、その前後を迷わず読めるようにページ全体が組まれているからでもあります。
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