『鬼頭莫宏短編集 残暑』は、デビュー作を含む7編を集めた本です。
亡くなった妹の幽霊が現れる表題作もあれば、出産を控えた夫婦が車で話す『パパの歌』もあります。
『なるたる』『ぼくらの』を知る人には、短い日常のやり取りから人物を描く鬼頭莫宏さんにも出会える一冊です。
1987年から2004年までの読み切り7編

小学館の作品紹介によると、『残暑』には7編の読み切りが収録されています。
表題作『残暑』は1987年のデビュー作で、この短編集は2004年に刊行されました。
収録作には、2000年の『華精荘に花を持って』や、2003年の『パパの歌』もあります。
『なるたる』を描いていた時期の短編も、一緒に収録した作品集です。
『パパの歌』では、夫婦の会話が人物を見せる

『パパの歌』の中心は、里帰り出産のため妻の実家へ向かう、隆と松葉の車内での会話です。
金髪で車や音楽が好きな隆と、趣味が居間の掃除だという松葉の父。
松葉は、見た目の違う夫と父を重ねて考えています。

松葉が父をよく思い出すと話すと、隆は軽口をたたきます。
松葉の返事は、短い「バカ?」です。
父の話から冗談へと移るやり取りに、二人の気安い関係が見えます。

別の場面では、松葉が言い出しかけ、隆が聞き返す様子が、別々のコマになっています。
短いやり取りとともに、台詞のない隆の顔にも一つのコマが使われています。
言葉が詰まったり、返事を促したりする二人を、表情と台詞の両方からたどれます。
短い会話を読みながら、この夫婦がどんな二人なのかを知っていく面白さがあります。
『残暑』の7編は『姫さまのヘルメット』にも収録

2022年の『姫さまのヘルメット 鬼頭莫宏短編集1987-2022』にも、『残暑』の7編が再録されています。
出版社の収録案内では、それに単行本初収録の4本と、描き下ろしの表題作を加えた計12編です。
カラーページも再現されています。
『残暑』をすでに読んだ方には、7編が重なる本です。
初めて短編を読む方は、デビュー作から2022年の表題作まで一冊でたどれる選択肢になります。
初期作品から長編へ進む順番や、趣味を題材にした作品も探したい方は、鬼頭作品の選び方も参考にできます。
まとめ
『パパの歌』では、夫婦の短いやり取りとともに、言葉のない隆の顔にも一つのコマが使われています。
鬼頭さんの長編を知る方にも、短編は、人物の表情や会話のテンポに目を向けて読み始められる入口になります。


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