『BASARA』で人間同士の戦いや策略を描いた田村由美さんは、次はもっとシンプルなサバイバルの話にしたいと考えていました。
それが『7SEEDS』の出発点です。
けれど、動物や気候の脅威を描いていくうちに、人間同士がぶつかり、誰かを救おうとする物語になったと、田村さんは振り返っています。

『BASARA』の戦いから「生き抜く」話へ
『BASARA』の更紗は、殺された兄の名を引き継ぎ、赤の王への復讐のために立ち上がります。
圧政に苦しむ人々の希望を背負って進む、長い戦いの物語でした。

田村さんは2002年のインタビューで、今度は陰謀や犯罪、殺し合いよりも、ひたすら生き抜く話を描きたかったと説明しています。
知人にサバイバルを描くと伝えたら、いつもそうではないかと返された、というやり取りもありました。
知人にはいつもどおりに見えても、田村さんは、戦いや陰謀を描く作品から変えようとしていたのです。
その理由をもう少し具体的に語ったのが、2024年の舞台化に際して行われた西田大輔さんとの対談です。
『BASARA』の戦いや策略を描くことに、少しくたびれた感じがあった。
そこで、動物に襲われる危険や、異常な気候から避難する話を考えていたといいます。
国を変える物語から、日々を生きる物語へ
サバイバルを描くことには、『BASARA』とは違う難しさがありました。
2020年の佐々木望さんとの対談で、田村さんは二作品の違いを説明しています。
『BASARA』には、更紗が王を倒して国を変えるという目標があり、そこへ向かって進められた。
一方、『7SEEDS』は生きる話なので、何度も話の進め方に迷ったそうです。
『7SEEDS』は、少女ナツが、理由も分からず荒れた海の上で目覚めるところから始まります。
田村さんは、見知らぬ場所に流れ着くという導入の案を編集者に話し、細かな準備ができないまま連載を始めたと振り返っています。
未知の場所でどうすればいいか分からないナツを描きながら、作者も物語の行き先を探していました。
ナツが動かないところから、別のチームへ

田村さんが最初に考えていたのは、ナツたち夏のBチームの視点だけで進み、その旅でいろいろな人に会う形でした。
しかし、内向的なナツは、突然放り出された世界ですぐ活発に動ける人物ではありません。
担当編集者からも主人公が何もしないと指摘され、田村さんは別のチームへ話を移します。
春のチームを描いてみると、チームを替えて視点を動かす方法が見えてきました。
もともと別の読み切りにするつもりだった冬のチームの話も、その方法なら本編へ入れられる。
こうして、一つのチームから見る物語が、いくつものチームを描く物語へ広がっていったのです。
自然の脅威を描いても、人の気持ちは置いていけない

2024年の対談で田村さんは、動物や気候の危険だけでは長い物語を作れず、結局は人間同士がぶつかり合う話になったと説明しています。
制作中に考え続けたのは、誰が誰を救えるのか、ということでした。
同じ対談では、危険な状況への反応やアクションだけにならないよう、登場人物の気持ちを置き去りにしないことも心がけたと話しています。
『BASARA』とは違うものを描こうとして始めたサバイバルにも、人と人の関係を描く難しさがありました。
まとめ
舞台の脚本・演出を担当した西田さんが注目したのも、絶望的な場所で懸命に生きる人たちの姿でした。
田村さん自身は、描き終えた『7SEEDS』に、若い人たちが一緒に暮らす学園ものの側面も感じたと語っています。
森や荒野で生きる若者たちにも、誰と過ごし、誰とぶつかり、誰に助けられるかという問題がある。
『BASARA』の戦いから離れようとして生まれた『7SEEDS』は、危険から身を守ることに加えて、人と一緒に生きる難しさを描く作品になっていったのです。

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