藤田和日郎さんが、新しく仕事場へ入ったアシスタントに観てもらう映画として挙げたのは、『オーロラの彼方へ』『潮風のいたずら』『3人の逃亡者』です。
2019年の本人取材で、藤田さんはこの3本を紹介しました。
特に『オーロラの彼方へ』から伝えたかったのは、観客の予想を上回るハッピーエンドの面白さでした。

『うしおととら』『からくりサーカス』を描いた作者は、映画や小説から物語の作り方を学んできました。
新人に映画を薦める話にも、自分が何を面白いと思い、漫画でどんな結末を目指しているかが表れています。
藤田和日郎が挙げた、3本の映画
『オーロラの彼方へ』は、亡くなった父と息子が無線機を通して話せるようになる映画です。
息子がいるのは1999年、父がいるのは30年前。
しかも、父が事故で命を落とす前日につながります。
息子は父を救おうとしますが、過去を変える行動によって、別の問題も起きていきます。

『潮風のいたずら』は、ゴールディ・ホーンとカート・ラッセルが出演した1987年の映画です。
裕福な女性が大工に仕事を頼みながら、報酬を払わずに去ってしまいます。
その女性が海へ落ちて記憶を失うと、大工は自分の妻だと偽り、4人の子どもがいる家へ連れてきます。
嘘から始まる暮らしを描くコメディです。

『3人の逃亡者』では、刑期を終えて更生しようとする元銀行強盗が、銀行で人質にされます。
警察には犯人だと間違われ、逃げることになってしまいます。
彼が連れていくのは、実際に銀行を襲った不慣れな強盗と、その幼い娘です。
立場の違う3人が、一緒に逃げることになる映画です。

観客を驚かせるハッピーエンドを目指す
藤田さんが、結末の面白さを説明する例として特に挙げたのは『オーロラの彼方へ』でした。
本人は、その結末を、観客が考えているよりもさらに上を行くハッピーエンドだと評価しています。
藤田さんは、主人公や登場人物の死によって意外性を出すより、観客が望む幸せな結末を、さらに予想以上の形で実現するほうが難しいと話しています。
藤田さんは、自分にもなかなかできない理想だとしながら、ずっと目指していると話しました。
『オーロラの彼方へ』は、その難しさと面白さを新人に伝えるための一本だったのです。
藤田自身も、映画から物語の作り方を学んだ
藤田さん自身が映画を手本にするようになった背景には、編集者の助言がありました。
構成について語った本人取材では、映画や小説を漫画の手本にするよう言われたと振り返っています。
藤田さんは『ダイ・ハード』や『ターミネーター』を観ながら、物語の始まり方や語り方を考えたそうです。
冒頭で、観客に続きを知りたいと思わせるにはどうするか。
好きな作品のどこが人を引きつけるのかを、言葉にして考えていました。
映画を漫画に使えるかという視点で観てしまうことや、映画・本の感想をノートに書くことも、2020年の本人取材で紹介されています。
新人への映画の紹介には、藤田さん自身が学んできた方法を伝える面もあります。
好きな映画を話すと、相手の好みも見えてくる
藤田さんは、自分の好きな映画を話すことで相手に自分を知ってもらえ、相手の好みも知れると説明しています。

同じ映画について話せば、どこに惹かれたのかを具体的に聞けます。
藤田さんが好きな作品を紹介し、アシスタントも自分の好みを話します。
映画は、仕事場で互いの考えを知るための話題にもなっていました。
こうした対話を大切にする姿勢は、アシスタントと交わす言葉にもつながっています。
まとめ
藤田さんが新人へ映画を薦める話は、作者と同じ映画を観る楽しみに加えて、作者がどこを面白いと考えたかを知る入口になります。
『オーロラの彼方へ』で注目していたのは、観客を喜ばせながら予想も超える結末でした。
その見方を知ってから映画を観ると、物語がどう終わるかとともに、作者が目指した驚かせ方にも目が向きます。
薦めた映画を知ると、藤田さんが新人と共有したかった、物語を見る視点にも触れられるのです。


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