福本伸行さんの『銀と金』は、双葉社の『アクションピザッツ』で1992年から1996年にかけて連載された漫画です。
紙の単行本も双葉社から刊行され、通常版は全11巻、文庫版は全8巻、新装版は全10巻です。
掲載誌と本の版を分けて見ていくと、『カイジ』が始まる頃の福本さんの仕事が見えてきます。
『天』『アカギ』と並行して描いていた
『銀と金』の連載当時、福本さんは麻雀漫画だけを描いていたわけではありません。
『天』『アカギ』を続けながら、別の出版社で『銀と金』も手がけていました。
同じ時期に、麻雀の勝負と、巨額の金をめぐる裏社会の物語を描いていたのです。

その仕事場にいた一人が、後に『海猿』『ブラックジャックによろしく』を描く佐藤秀峰さんでした。
佐藤さんは、1996年に福本さんのスタッフになったと、自身の回想に書いています。
当時は『天』『アカギ』が月刊連載、『銀と金』が隔週連載で、ひと月に合計四本の原稿を作る仕事場でした。
佐藤さんが関わったのは、『銀と金』の通常版第7巻の途中からです。
終盤の競馬編では、登場する馬の多くを佐藤さんが描いたといいます。
本の表紙には福本伸行という一人の名前が載っていますが、その原稿はスタッフの仕事も重なってできていました。
作者の隣で、漫画に自分の名前が入った
佐藤さんは『銀と金』を読む側でも、勝負の組み立てや緊迫感に強く引きつけられていました。
自分が制作へ加わるようになると、作品の見え方が変わったと振り返っています。
完成した漫画を読むだけでは見えなかった、作者が何度もネームを練り直す姿が、隣にあったからです。

佐藤さん自身の名前が、物語に使われたこともありました。
福本さんに名前を使ってよいか尋ねられ、佐藤さんが承諾すると、神威家編の人物が「神威秀峰」となったのです。
作品に感動していた読者が、作画へ加わり、登場人物の名にまでなる。
佐藤さんの回想には、作者とスタッフとの、そんなやり取りも残っています。
福本さん自身が語る『天』『銀と金』『カイジ』という三つの転機に、佐藤さんの回想を重ねると、その頃の制作の様子も分かります。
代表作が一作ずつ入れ替わったのではなく、複数の作品を並行して描く中で、次の仕事が始まっていたのです。
通常版・文庫版・新装版では巻数が違う
『銀と金』を本で探すと、11巻のセットも、8巻や10巻のセットも見つかります。
双葉社から出た主な紙の版は、次の三種類です。
通常版は、雑誌で連載されていた時期に刊行された単行本です。
文庫版は、その後に出た小さな判型の本で、新装版は通常版と同じB6判ですが、表紙の装いと巻数が変わっています。
全8巻だから途中までしかない、全10巻だから一冊足りない、ということではありません。
中古で買い足す場合などは、「第何巻か」だけでなく、通常版・文庫版・新装版のどれなのかも確認すると、同じ版で揃えられます。
掲載誌は一つでも、読者が手にする本は同じ形とは限らないのです。
まとめ
佐藤さんは、読む側では『銀と金』に作者の才能を感じ、作る側では、その作者が重ねる努力を知りました。
福本さんの仕事は、掲載誌や巻数だけでは見えてきません。
当時のスタッフが残した回想を読むと、何度も物語を練り直しながら複数の連載を描いていた姿まで、思い浮かべられるようになります。



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