『銀と金』の掲載誌はアクションピザッツ|連載当時の仕事場と三つの単行本

銀二と森田を描いた銀と金新装版第1巻表紙 漫画家・作者
福本伸行『銀と金 新装版』第1巻、2014年刊/双葉社。

福本伸行さんの『銀と金』は、双葉社の『アクションピザッツ』で1992年から1996年にかけて連載された漫画です。
紙の単行本も双葉社から刊行され、通常版は全11巻、文庫版は全8巻、新装版は全10巻です。
掲載誌と本の版を分けて見ていくと、『カイジ』が始まる頃の福本さんの仕事が見えてきます。

『天』『アカギ』と並行して描いていた

『銀と金』の連載当時、福本さんは麻雀漫画だけを描いていたわけではありません。
『天』『アカギ』を続けながら、別の出版社で『銀と金』も手がけていました。
同じ時期に、麻雀の勝負と、巨額の金をめぐる裏社会の物語を描いていたのです。

銀二を描いた銀と金の通常版第1巻表紙
福本伸行『銀と金』第1巻、1992年刊の通常版/双葉社。 出典

その仕事場にいた一人が、後に『海猿』『ブラックジャックによろしく』を描く佐藤秀峰さんでした。
佐藤さんは、1996年に福本さんのスタッフになったと、自身の回想に書いています。
当時は『天』『アカギ』が月刊連載、『銀と金』が隔週連載で、ひと月に合計四本の原稿を作る仕事場でした。

佐藤さんが関わったのは、『銀と金』の通常版第7巻の途中からです。
終盤の競馬編では、登場する馬の多くを佐藤さんが描いたといいます。
本の表紙には福本伸行という一人の名前が載っていますが、その原稿はスタッフの仕事も重なってできていました。

作者の隣で、漫画に自分の名前が入った

佐藤さんは『銀と金』を読む側でも、勝負の組み立てや緊迫感に強く引きつけられていました。
自分が制作へ加わるようになると、作品の見え方が変わったと振り返っています。
完成した漫画を読むだけでは見えなかった、作者が何度もネームを練り直す姿が、隣にあったからです。

カイジ第1巻を手にする福本伸行。2023年の本人取材写真
福本伸行、2023年の本人インタビュー/撮影・柏原力、講談社。 出典

佐藤さん自身の名前が、物語に使われたこともありました。
福本さんに名前を使ってよいか尋ねられ、佐藤さんが承諾すると、神威家編の人物が「神威秀峰」となったのです。
作品に感動していた読者が、作画へ加わり、登場人物の名にまでなる。
佐藤さんの回想には、作者とスタッフとの、そんなやり取りも残っています。

福本さん自身が語る『天』『銀と金』『カイジ』という三つの転機に、佐藤さんの回想を重ねると、その頃の制作の様子も分かります。
代表作が一作ずつ入れ替わったのではなく、複数の作品を並行して描く中で、次の仕事が始まっていたのです。

通常版・文庫版・新装版では巻数が違う

『銀と金』を本で探すと、11巻のセットも、8巻や10巻のセットも見つかります。
双葉社から出た主な紙の版は、次の三種類です。

版 巻数 刊行時期 本の大きさ
通常版・アクションコミックス 全11巻 1992〜1996年 B6判
文庫版 全8巻 2005〜2006年 A6判
新装版・アクションコミックス 全10巻 2014〜2015年 B6判

通常版は、雑誌で連載されていた時期に刊行された単行本です。
文庫版は、その後に出た小さな判型の本で、新装版は通常版と同じB6判ですが、表紙の装いと巻数が変わっています。
全8巻だから途中までしかない、全10巻だから一冊足りない、ということではありません。

中古で買い足す場合などは、「第何巻か」だけでなく、通常版・文庫版・新装版のどれなのかも確認すると、同じ版で揃えられます。
掲載誌は一つでも、読者が手にする本は同じ形とは限らないのです。

まとめ

佐藤さんは、読む側では『銀と金』に作者の才能を感じ、作る側では、その作者が重ねる努力を知りました。
福本さんの仕事は、掲載誌や巻数だけでは見えてきません。
当時のスタッフが残した回想を読むと、何度も物語を練り直しながら複数の連載を描いていた姿まで、思い浮かべられるようになります。

この記事もおすすめ

コメント

アクセス解析について
タイトルとURLをコピーしました