赤木しげるは、初めから『アカギ』の主人公として生まれた人物ではありません。
先に『天 天和通りの快男児』へ、主人公・天のライバルとして登場しました。
その赤木の少年時代を、別の作品の主役として描いたのが『アカギ』です。
福本伸行さんは、赤木を最初に描いた頃から、強さの面で特別な人物と考えていたと振り返っています。
大人の赤木が、先に『天』へ登場した
福本さんは、『天』を、自分の漫画が長く続き、掲載誌の柱になった最初の作品として挙げています。
『天』『銀と金』『カイジ』という三つの転機の出発点になった漫画です。
赤木は、その『天』で、主人公と競う大人の雀士として生まれました。

『天』の対局では、赤木が、安い手への差し込みで自分のトップを守ろうとする場面があります。
赤木は、自分が和了できなくても、天が逆転する前に半荘を終わらせればよいと判断しています。
天は赤木の狙いを読み、赤木がほかの打ち手へ払う点数を利用して、勝負を続けようとします。
天が赤木の差し込みを逆手に取った対局では、二人が互いの判断を読んで競っています。

物語の中では、『アカギ』の少年時代が、『天』の大人の時代より先にあります。
漫画を作った順序は、その逆でした。
二つの漫画は、同じ人物を、別の年齢と立場で読む作品なのです。
福本さんが、赤木へ重ねた理想像
2018年の『近代麻雀』に掲載された完結記念インタビューで、福本さんは、赤木を描いたときから、赤木以上に強い男はいないと決めていたと話しています。
主人公ではない赤木にも、初めから特別な強さを持たせていたのです。

人物像についても、福本さんは、自分の中にある、格好のいい男の理想像を、無意識に投影したところがあるかもしれないと振り返りました。
もう一本、麻雀漫画を描くことには迷った
『アカギ』の連載を始める際には、福本さんにも迷いがありました。
2016年の横須賀でのトークイベントで、すでに『天』を描いていたため、麻雀漫画を二本同時に描いてよいのか、アイデアが出なくならないかと考えたと話しています。
編集側に説得されて始めたものの、これほど長く続くとは思っていなかったとも振り返りました。

主人公が変わっても、題材はどちらも麻雀です。
福本さんが気にしたのは、同じ題材で二つの漫画を描き続けられるか、ということでした。
『アカギ』は、伝説の雀士の少年時代を描く
竹書房は、『アカギ』を、『天』に登場する伝説の雀士・赤木しげるの、少年期から青年期を描いた作品と紹介しています。
『アカギ』第1巻の始まりでは、南郷がヤクザ相手の麻雀で追い込まれている雀荘へ、ずぶぬれの少年が入ってきます。
麻雀牌を握ったこともない赤木に、南郷は代わりに打たせる。
大人の赤木が知られていた後に、その少年時代を主役として描く漫画が始まるのです。

まとめ
福本さんにとって、赤木は、主役になる前から特別な強さと格好のよさを持つ人物でした。
その人物を『天』の中で描くことから、少年の赤木を主役に、新しい物語を始める。
赤木の誕生をたどると、一作のライバルが、作者のもう一つの代表作を背負う主人公へ広がっていった経緯が分かります。


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