『烈火の炎』森光蘭が欲した永遠――手に入れたものを、死に奪わせない

幼い紅麗に欲しい物を言うよう促す森光蘭 烈火の炎
画像出典:安西信行『烈火の炎』小学館

森光蘭は、欲しいものが手に入っても満たされない。
食べ物、金、家、絵画と、次のものを求め続ける。
その森が、最後に欲するのが永遠の命だった。

森にとって死は、集めてきたものを無意味にしてしまう出来事だ。
自分が死ねば、富を手に入れても楽しめない。
終わらない欲望を満たし続けるために、森は自分の命も終わらせたくなかったのだ。

欲しいものを集めても、満足には届かない

森は、自分の欲望を振り返る言葉の中で、何かが手に入れば次のものを欲しくなり、満たされることがないと語る。
不老不死を求める前から、森には、これを得れば十分だと言えるものがない。
巨万の富を築いても、その欲望は終わらなかった。

幼い紅麗に欲しい物を尋ねる森光蘭
安西信行『烈火の炎』小学館

ところが、どれほど多くのものを集めても、森自身の人生には終わりがある。
森が恐れるのは、欲望を満たす自分がいなくなることだった。
永遠の命が欲しいという願いは、森の尽きない欲望の行き着く先にある。
命が続けば、さらに手に入れ、さらに楽しめる。
森は、その時間を死によって終わらせたくなかった。

自分の永遠のためなら、人も道具にする

森は、烈火の傷を治す柳の力を、不老不死の手掛かりだと考える。
柳が誰かの傷を癒すところを見て、森が欲したのは、その力を自分のために使うことだった。
森は紅麗に柳をさらわせようとする。

紅麗を従わせるためには、紅麗が慕う月乃を人質にしている。
それでも紅麗の力を恐れた森は、自分に逆らわない炎術士を求め、紅麗と紅の細胞から煉華を作らせる。
柳の力も、紅麗の力も、森にとっては自分の望みをかなえるために手に入れたいものなのだ。

森光蘭をパパと呼ぶ煉華
安西信行『烈火の炎』小学館

煉華は森をパパと呼ぶ。
しかし森は、天堂地獄となった後、炎への耐性を得るために煉華を吸収する。
自分に従う娘を作っても、その命を守り続けるためには力を使わない。
森が欲する力の行き先は、最後まで自分自身だった。

天堂地獄になっても、柳を欲し続ける

森は、永遠の命と力を求め、天堂地獄と融合する。
人間の姿を失っても、森はその力を手に入れようとする。
しかし、不完全な天堂地獄は、傷ついて分裂すると、その分だけ弱くなってしまう。
分裂で失った力を取り戻すためには、人間を食らうか、治癒の力を取り込む必要があった。

天堂地獄の戦闘体
安西信行『烈火の炎』小学館

だから森は、天堂地獄を手に入れた後にも柳を狙う。
体が再生し、簡単には死ななくなるだけでは、森が望む完全な不死に届かない。
傷ついて力を失う心配まで取り除くため、柳の治癒が必要になる。
森は自分が生き続けるために、他人の命と力を取り込んでいく。

だが、最後に炎となった柳の癒しが働くのは、森が奪ってきた人々の命に対してだった。
その魂が解放されると、天堂地獄の体を支えていた力も失われる。
自分の永遠のために集めた命を、森は自分のものとして留めておけなかった。

炎となった柳を描いた最終巻の表紙
安西信行『烈火の炎』小学館、第33巻表紙

森の永遠は、満ち足りた人生を長く楽しむための願いではない。
何を得ても満足できず、そのまま次を欲し続けるための永遠だった。
富を集める時から命を集める時まで、森の欲望は変わらない。
最後に死を拒んで叫ぶ森の姿には、他人からいくら奪っても、自分が失うことだけは受け入れられない、その生き方が表れている。

この記事もおすすめ

コメント

アクセス解析について
タイトルとURLをコピーしました