『烈火の炎』八竜は、同じ理由で烈火に力を貸したのではない

大好きだったよ烈火と、最後の戦いで励ます塁 烈火の炎
画像出典:安西信行『烈火の炎』小学館

天堂地獄との最後の戦いで、烈火は裂神を呼び出すため、七竜を続けて召喚する。
その呼びかけに応える言葉が、竜ごとに違う。
円は烈火の力を評価し、塁は好きだったと伝え、刹那は天堂地獄を殺すと叫ぶ。

同じ烈火の炎でも、八竜にはそれぞれの人格がある。
烈火が全員に同じ理由で認められたわけではない。
円、塁、刹那との関わりをたどると、それぞれに違う、烈火と火竜たちの関係が見えてくる。

円が応えたのは、敵を救いたいという思い

円が目覚める場面では、烈火は自分と戦っていた音遠を救おうとする。
紅麗を守るために命を賭けた音遠へ、水鏡の氷柱が迫っていた。
烈火は結界を張り、音遠を守る。
円の力が必要になったのは、烈火が敵を倒そうとした瞬間ではなく、その敵を死なせたくないと思った瞬間だった。

結界を作る火竜・円と、生前の円の姿
安西信行『烈火の炎』小学館

この場面を踏まえると、円の結界は、誰を守るかという烈火の判断と結びついている。
戦っている音遠であっても、烈火は守る対象から外さなかった。

ただ、円がいつも優しく烈火に接するわけではない。
最後の召喚でも、円は烈火をけなしながら、その力を評価していると告げる。
円は口の悪さを残したまま、烈火の挑戦を認め、最後まで見届けようとする。

謎かけをする塁が、最後はまっすぐ励ます

塁は幻を操り、烈火にも謎を解かせる火竜だ。
烈火は塁の問いに答え、その力を借りるようになる。
塁の幻は烈火の対戦相手を惑わせるが、烈火も、塁の謎に答える側になる。

大好きだったよ烈火と、最後の戦いで励ます塁
安西信行『烈火の炎』小学館

ところが最後の召喚で、塁は謎を出さない。
烈火への親愛を伝え、繰り返し励ます。
いつもは言葉や姿で人を惑わせる塁が、この時は気持ちをそのまま烈火へ届ける。
塁の言葉が胸に残るのは、別れの寂しさに加えて、この素直さがあるからだ。

烈火にとって塁は、幻を使える便利な力だけではなかった。
その力を貸してきた本人が、最後に烈火を好きだったと伝えてくれる。
戦いの中で借りていた炎に、一人の人物の思いが重なる。

刹那は、烈火を好きになったから応じたのではない

刹那との関係は、円や塁とは違う。
刹那は試練で烈火を本気で殺そうとする。
烈火に力を貸すからといって、刹那の残忍さが消えるわけではない。

烈火を見逃すつもりはないと告げる刹那
安西信行『烈火の炎』小学館

最後の召喚でも、刹那が怒りを向けるのは天堂地獄だ。
刹那は天堂地獄が気に入らず、殺したいから烈火に応じる。
烈火への親愛を語る塁と、同じ気持ちになったのではない。

それでも、刹那の力は烈火の戦いに加わる。
烈火を好ましく思うことと、烈火に協力することは、刹那の場合には別なのだ。
最後までこの違いが残るため、七竜の召喚は、全員が一斉に同じ励ましを口にする場面にはならない。

円には円の評価があり、塁には塁の親愛があり、刹那には刹那の敵意がある。
烈火の呼びかけに応えるたび、それぞれが何を思っているのかも伝わってくる。
八竜の炎には、戦うための力と、その力を貸す人物の声が、最後まで一緒に残っている。

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