セザンヌの本物を選び損ねた中条は、森田との勝負で四億円を失った。
しかし、森田の計画には、中条が本物を当てた場合の備えもあった。
その備えを作ったのは、中条が勝ちやすくするために行った不正である。

青木の裏切りが、中条を勝負へ連れてくる
森田は、贋作を用意するために画家の青木を仲間にした。
ところが、青木は中条に買収され、森田側の情報を中条へ渡す。
中条は青木の手引きで、本物の額縁にチェックまでつけていた。
森田は、青木の裏切りを計画に織り込んでいた。
森田は青木への扱いを悪くし、青木が中条側へつくように仕向けていた。
疑り深い中条に、森田の言葉だけを信じさせるのは難しい。
そこで、森田の仲間を買収して内情を知った、と中条が思える状況を作ったのである。
中条は、森田を出し抜く方法を自分で手に入れたつもりでいる。
森田からの誘いをうのみにするより、そのほうが安心して勝負に乗れる。
青木の裏切りは、森田が中条を勝負の場へ引き込むための仕掛けでもあった。
不正の録画は、正解された時の備えになる
森田は向かいのビルに撮影班を置き、中条が印をつける様子を撮影させていた。
森田はチェックを丸で囲み、中条が目印を見つけても、その絵を安心して選べないようにした。
この丸によって中条の判断が崩れる過程は、額縁の印を扱った記事で詳しく読める。
撮影した映像には、別の使い道もあった。
勝負を終えた森田は、帰りの車内で川田に、中条が本物を当てた場合の策を明かす。
不正の証拠を見せ、勝負の無効を申し出るつもりだったのである。
中条が正解しても、森田は黙って本物を渡すつもりではなかった。
森田は、中条が外すように仕向けるだけでなく、当てられた時にも不正を理由に対抗できるようにしていた。
これは、実際に勝負を無効にした場面ではなく、勝負後に森田が明かした備えである。

中条にとって青木の買収と額縁の印は、森田に勝つための工夫だった。
森田はその工夫を、勝負に参加させる理由にも、正解された時に争う材料にも変えている。
中条の不正は、本物を選ぶ助けになる一方で、その正解を森田に争われる弱みにもなっていたのである。
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