『銀と金』冒頭の10億円はどこから来た?銀二の最初の仕事を読む

箱の中身が10億円だと聞き、銀二に問い返す森田 銀と金
『銀と金』福本伸行・第1話。

森田鉄雄が日当10万円で引き受けたのは、段ボール箱を運ぶ仕事だった。
平井銀二は、中には10億円が入っていると言う。
競馬で金を失ったばかりの森田にとって、荷物運びの先で見ることになったのは、想像もしていなかった大金だ。

この10億円を手にした方法と、銀二がその金をどう使ったかは、ひと続きで読むと面白い。
銀二は人の弱みを金に変え、その金を貸す時にも、相手の事情を利用する。
森田を引きつけたのは、札束の量とともに、金を使って人を動かす銀二の仕事だった。

箱の中身が10億円だと聞き、銀二に問い返す森田
『銀と金』福本伸行・第1話。

10億円の出所は、不正融資をめぐるゆすり

銀二は不正融資の情報をつかみ、それを材料にゆすって10億円を手に入れた。
不正を知られて困る相手に、秘密を握っている立場から金を出させたのである。
冒頭で森田が運ぶのは、銀二がそうして得た現金だ。

銀二の稼ぎ方では、相手が何を隠したがっているかを知ることが、金を引き出す力になる。

銀二は、金を貸す相手に合わせて顔を変える

銀二は手にした金を、資金繰りに困った人間へ貸し付けていく。
借り手に厳しく迫ることもあれば、救いの手を差し伸べるように話すこともある。
森田は、その態度の使い分けを間近で見る。

裏社会で銀王と呼ばれる銀二と、その仕事に驚く森田
『銀と金』福本伸行・第1巻。

銀二が見ているのは、借り手の窮状と、そこから自分が得られる利益だ。
厳しい言葉も優しい言葉も、銀二が相手から利益を引き出すために使うものだ。
金を貸す側に回ってからも、銀二は相手の弱みに目をつけている。

銀二は森田に、裏金に頼る人間の運命を「しぼられるか」「奪われるか」「殺される」と語る。
借り手が感謝して頭を下げている場面の裏で、銀二はこれほど冷たく相手の行く末を見ている。

裏金に頼る者の運命を三つ挙げる銀二と、それを聞く森田
『銀と金』福本伸行・第2話。

森田が見た、金を持つ側と持たない側

借り手たちの姿を見た森田は、彼らを生贄として連れていかれる羊にたとえる。
森田には、金を持たないというだけで、彼らが罪人のように頭を下げているように見えた。
「どんなに真面目に働いても金を持たなければ罪人」という言葉は、その場で森田が感じた、借りる側の弱さを表している。

金を持たない者の立場について考える森田の言葉
『銀と金』福本伸行・第2話。

森田自身も、金がなく、銀二の誘いに乗った若者である。
その森田の前で、借り手たちは銀二に頭を下げ、銀二は一人ずつ相手を見て対応を決めている。
森田は銀二の力に魅せられ、銀二たちの仲間になることを望むようになる。

冒頭の10億円は、銀二の稼ぎの大きさを示すと同時に、森田へ裏社会の仕事を見せる金でもある。
秘密を握って金を得た銀二は、今度は金に困っている人間へ貸し付け、利益を得ようとする。
森田が銀二に魅せられた時、森田はその金の出所も、貸し付ける仕事の冷たさも見ている。
銀二の世界に入りたいという森田の願いは、単に大金を見て喜んだというだけでは済まない。
森田が足を踏み入れたくなった世界は、この10億円の使われ方に、すでに表れている。

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