『るろうに剣心』蒼紫はなぜ薫の死を疑えたのか――縁が見せなかったもの

集英社刊『るろうに剣心』カラー版第24巻の表紙 るろうに剣心
『るろうに剣心』カラー版第24巻/和月伸宏・集英社

神谷道場で煙幕が晴れたあと、剣心たちは胸に刀を突き立てられた薫の姿を見つける。
道場での決戦に間に合わなかった蒼紫は、後から話を聞いて一つの疑問を持った。
蒼紫が疑ったのは、縁が殺害の瞬間を仲間の誰にも見せなかったことだ。

縁はなぜ、剣心に殺害の瞬間を見せなかったのか

縁の人誅は、巴を失った自分と同じ苦しみを剣心に味わわせるための復讐だった。
蒼紫はその目的を知り、薫を殺すところを剣心に見せなかったのはなぜか、と考える。
縁は剣心だけでなく、道場にいた仲間の誰にも殺害の瞬間を見せていない。
煙幕が晴れた後に残ったのは、胸を刺された薫の姿という「結果」だけだった。

神谷道場に残された薫そっくりの屍人形の原作場面
『るろうに剣心』人誅編/和月伸宏・集英社

結果だけでも剣心は絶望した。
蒼紫は、剣心の抵抗が激しく、縁の計画が変わった可能性も考える。
それでも、周到に剣心を苦しめてきた縁が、最後に殺害の瞬間だけ隠すのは不自然だった。
蒼紫はこの疑問から、薫の死を調べ始める。

違和感を「屍人形かもしれない」に変えた知識

神谷道場の物置には、左之助が持ち帰った外印の人形・夷腕坊が残っていた。
その人形が傷み始めているのを見た蒼紫は、材料に人の皮膚や骨が使われていると確かめる。
蒼紫は御庭番衆の御頭を継いだときに読んだ書物から、屍人形の技術を知っていた。
外印が人の体を使った人形を作れるなら、薫に見えたものも屍人形かもしれない。
その場合、殺害の場面が見えなかったことと、道場に薫そっくりの姿が残ったことを両方説明できる。
ただし、これはまだ一つの可能性にすぎない。
蒼紫は道場での出来事を仲間から聞いただけで、薫に見えたものを調べたわけではなかった。

墓を調べて初めて分かったこと

医者の恵も、道場に残された姿を薫の遺体だと判断していた。
蒼紫の疑いを、恵は受け入れられない。
けれど、外見だけでは見分けられない屍人形なら、確かめるには内部を見るしかない。

蒼紫たちは薫の墓を掘り返す。
蒼紫が遺体に見えたものの内部から鋼線を引き出し、葬られていたのが屍人形だと分かる。
道場で見つかったものは薫本人ではなかった。
蒼紫は、薫がどこかで生きていると仲間に告げる。
ただ、薫の居場所はまだ分からない。

後に屍人形を取り戻しに来た外印と向き合い、蒼紫たちは本物の薫を探す手がかりを得る。

薫の屍人形を探しに来た外印と蒼紫の原作場面
『るろうに剣心』人誅編/和月伸宏・集英社

縁の復讐は一度、剣心と仲間たちに薫の死を信じさせた。
その思い込みを崩したのは、蒼紫が「見たもの」と「見ていない殺害」を分け、疑問を墓で確かめたことだった。
薫の死を疑うだけで終わらず、次に探すための根拠を作ったのである。

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