『おろち』で少女を主人公にした理由について、楳図かずおさんは、少年誌でまだ誰も試していないと思ったからだと語っています。
楳図さんは、同時にこの作品を「究極の少女マンガ」にしたかったとも振り返っています。
人間の心の怖さを描こうとした『おろち』には、それまで少女漫画で重ねた仕事もつながっています。

テーマを任され、少女を主人公に選んだ
『おろち』は1969年に『週刊少年サンデー』で連載が始まりました。
当時の楳図さんは、すでに少女誌と少年誌の両方で恐怖漫画を描いていました。
2009年のインタビューによると、サンデーからはテーマを任され、何を描いてほしいという指定はなかったそうです。
そこで楳図さんは少女を主人公に選び、声をかけた田中一喜さんも反対しなかったと回想しています。

少女漫画で描いてきた怖さの、その先へ
回想録『わたしは楳図かずお―マンガから芸術へ』の公開抜粋では、楳図さんは『おろち』を、それまで手がけた蛇を題材とする作品の総仕上げとも考えていたと説明しています。
そこで描きたかったのは、人と人との関係や、集団になった人間の怖さでした。
『へび女』などで見た目の恐ろしさを描き、『赤んぼ少女』で人間そのものの怖さを描くうちに、関心が広がっていったといいます。
『おろち』は、少女漫画で重ねた仕事の先に生まれた作品でもありました。

おろちは、人間を見つめる少女
名前に蛇を思わせる響きがあっても、おろちは蛇女のような姿ではありません。
楳図さんは同じ回想録で、おろちは不老不死で、人間社会を一歩引いて観察する少女だと説明しています。
第1話「姉妹」で、おろちが出会うのは、18歳になることを恐れて暮らす姉妹です。
おろちは、外からは分からない姉妹の事情に触れていきます。
少女の目を通して、人間同士の関係や隠された思いを描く作品になっているのです。

楳図さんが少女誌・少年誌・青年誌でどのような作品を描いたかは、代表作と歩みでも紹介しています。
まとめ
楳図さんは、少年誌で少女を主人公にする新しさと、少女漫画で追ってきた怖さを『おろち』に持ち込みました。
主人公の意外さだけで終わらず、彼女が見つめる人間たちの物語へ進むところに、この試みの面白さがあります。

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