『銃夢』の作者・木城ゆきとさんは、紙に描く作業とデジタル作業を組み合わせて漫画を制作してきました。
2019年の本人インタビューで語った使い分けの基準は、どちらで作業した方が速いか、という実用的なものでした。
公式サイトの制作解説と、後に公開した作画動画をたどると、紙の原稿をデジタルで仕上げる方法から、人物をデジタルで描く実例までを見ることができます。
紙に描いた原稿を、デジタルで仕上げる
木城さんは、2003年に公開した『銃夢LastOrder』の制作工程で、アナログとデジタルを組み合わせた方法を説明しています。
ケント紙に下描きし、ペン入れした原稿をスキャンして、コンピューターで仕上げる流れです。
フキダシも別に取り込んでおき、絵と分けて扱います。


紙に描く段階から、その後のデジタル作業を考えた工夫がありました。
下描きとペン入れの詳しい解説では、ガリィを別の紙に描き分ける例を紹介しています。
後で人物の範囲を選び、加工する作業をしやすくするためです。
コマの枠線も、紙では大まかな線にとどめ、Photoshopで清書すると説明しています。
工程を見ているとデジタル作業が多く見えますが、2003年の木城さんによると、作業時間の8割はアナログでした。
紙の下描きには時間がかかり、その原稿を最後のデジタル仕上げで完成させていたのです。
紙とデジタルのどちらが速いかで選ぶ
2019年の本人インタビューでも、木城さんは両方を行き来する作画を説明しています。
当時は液晶タブレットを導入して間もなく、慣れたアナログの方が速く進む作業もありました。
そこで、アナログで速くできる部分はアナログ、デジタルで速くできる部分はデジタルを使っていたといいます。

一方で、紙に下描きを丁寧に描いても、位置が少しずれていると、大きく描き直す負担が生まれます。
木城さんは、そうした困りごとや、3DCGを作る際に構図を決めるラフがあると作業しやすいことも、手順を組み合わせた理由として挙げています。
木城さんは、慣れた手描きの速さを生かしながら、デジタルでの修正や3DCGを取り入れていました。
3DCGは、漫画を描くための下敷きにもなる
木城さんは、2019年の取材で、1997年頃に『銃夢』の豪華本の表紙制作へ3DCGを導入したと振り返っています。
その後の漫画制作では、写真のような仕上がりを目指すより、輪郭を取り出して使う方法へ変わっていきました。
公式の『銃夢LO』3DCGギャラリーには、劇中の場面を描くために制作した建物や室内のモデルが公開されています。
ザレム居住区の通路もその一つです。
線で表した通路を見ると、階段や手すり、奥へ続く空間が立体として組み立てられていることが分かります。

ギャラリーでは、ザレムの都市モデルについて、輪郭線を抽出し、下描きに使いやすくしていると説明しています。
この場合の3DCGは、漫画の背景を描くための下敷きとして作られたものでした。
2021年には、人物のデジタル作画も公開
木城さんは、2021年に人物のデジタル作画を解説する動画を公開しています。
『銃夢火星戦記』の作例を使い、人物のペン入れや仕上げを見せるものです。
この動画では、液晶画面へペンで描き込む手元を見ることができます。
紙にペン入れしていた2003年の例に加え、2021年には、人物をデジタルで描く工程も公開していました。
まとめ
木城さんにとってデジタルは、仕上げを引き受け、紙の作画を助ける技術でもありました。
別紙に描いたガリィから背景のCGモデルまで、次の工程で使いやすくすることを考えた作画だと分かります。

コメント