八木教広は結末を決めて描く?予定を変えるネームの作り方

エンジェル伝説の北野たちを描いたカラーイラスト 八木教広
『エンジェル伝説』の人物たちを描いたカラーイラスト/八木教広、集英社。出典:THE ZERO to ONE 本人インタビュー。

八木教広は、物語の方向をある程度考えながら、そこへ至る展開は固定せずに描くと語っています。
途中で面白い進み方を思いつけば、予定を変えることもあります。
八木は、人物の言動を決まった展開へ無理に合わせず、ネームを描きながら話を進めようとしていました。

『CLAYMORE』完結後の賀来ゆうじとの対談では、『エンジェル伝説』の白滝幾奶を退場させる予定まで変えた例が語られています。
八木が、考えていた展開をどう扱っていたのか、本人の説明からたどります。

先の展開を話さないのは、自分の中で固まってしまうから

八木はこの対談で、物語の方向は考えても、そこへ至る流れは担当編集者やアシスタントに話さず、メモにも取らないと説明しています。
口にすると、自分の中で展開が固まってしまう感覚があるためです。

予定が固まると、人物が決まった進路に沿って動かされ、ネームの中で生き生きしなくなる。
八木が避けたかったのは、人物が物語を進めるための駒になってしまうことでした。
結末が決まっている場合でも、そこへの進み方は人物に任せたいと語っています。

ネームは、コマ割りや台詞を仮に描いて、漫画の流れを作るものです。
八木にとっては、台詞を描きながら人物の性格も決まる場所でした。
人物が何を言うのか、どう振る舞うのかを描く過程に、まだ決まっていない部分を残していたのです。

当初5〜6巻の予定と連載の広がりを八木教広が語る賀来ゆうじの取材漫画
人物をネームの中で動かす方法を語る八木教広の取材漫画/取材・漫画:賀来ゆうじ、集英社。 出典

白滝幾奶を退場させる案は、ネームを描いて変わった

『エンジェル伝説』で、八木は白滝幾奶のエピソードが終わったら、彼女を退場させるつもりでした。
ところがその方向では、ネームをうまく作れなかったといいます。
反対に、レギュラーの一人として残す方向で考えると、すらすらと描けるようになりました。

退場を予定していた人物が、描いてみると残る人物になった。
白滝の扱いは、八木が最初に考えた筋書きより、実際にネームを描いた手応えから選んだものでした。
人物を決まった進路に沿わせたくないという説明が、ここでは登場人物を残す判断に表れています。

エンジェル伝説の北野たちを描いたカラーイラスト
『エンジェル伝説』の人物たちを描いたカラーイラスト/八木教広、集英社。 出典

伏線があっても、もっと面白い展開なら変える

八木は、途中で別の面白い方向を思いつけば、そちらへ進むとも話しています。
張っていた伏線を生かさない展開でも、さらに面白いと思えば変更するという方針です。
先に準備したことを守るより、その時点で見つかった面白さを選ぶ余地がありました。

八木は『CLAYMORE』の連載中、物語をきちんと締めくくりたいという思いを持ち続けていました。
その思いは、当初5〜6巻の予定から全27巻へ広がった経緯を振り返る対談でも語られています。
完結後には、望む形で終えられたことに安堵したと話しました。

CLAYMORE最終27巻のデジタル版表紙
『CLAYMORE』最終27巻デジタル版の表紙/八木教広、集英社。 出典

まとめ

白滝幾奶を残したときのように、八木の予定は、人物を描く手応えによって変わることがありました。
ある程度の方向を持っていても、そこまでの道を先に決めすぎない。
本人にもまだ分からない部分を残すことで、ネームの中に新しい展開が生まれる余地を作っていたのです。
八木が結末に向かって描く方法には、話を終えたいという思いと、途中で見つける面白さの両方がありました。

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