藤崎竜はキャラクターをどう作る?目的と動機から始まる創作論

かくりよものがたりで父を思いながら自分の願いを話す人物 漫画家・作者
『かくりよものがたり』/藤崎竜、集英社。新人漫画家への座談会に掲載されたコマ。

藤崎竜さんは、面白そうな人物を思いついたら、その人物が何をしたいのか、なぜそう思うのかを考えると話しています。
目的と動機を決めることで、感情や行動に一貫性を持たせるのです。
この方法は、2016年に公開された新人漫画家への座談会で説明されています。
『封神演義』などで知られる藤崎さんが、自分の人物づくりを言葉にした助言です。

「何をする人か」から、そうしたい理由まで考える

たとえば、登場人物が有名になりたいと願っているなら、何のために有名になるのか、何がそのきっかけなのかまで考えます。
スポーツやバンドは、その願いをかなえる手段になる。
人物が何をしているかだけでなく、そこへ向かう理由を作るのが藤崎さんの説明です。

かくりよものがたりで父を思いながら自分の願いを話す人物
『かくりよものがたり』/藤崎竜、集英社。新人漫画家への座談会に掲載されたコマ。 出典

座談会には、『かくりよものがたり』で、誰かのために死ねるなら幸せだと語る場面も添えられています。
願いを語る人物は、自分の代わりに死んだ父にも触れています。
人物が何を幸せだと考えるのかという説明に、父との出来事が含まれているのです。

日常の人を、自分が面白いと思うところから見る

人物の種を探すとき、藤崎さんは普段の人間観察を挙げています。
ほかの人が気に留めない部分でも、自分には面白く見えることがある。
その個性を強め、自分が自然に動かせる人物にしていくと話しています。
描き手自身が面白いと思うところを見つけることが、人物を作る材料になります。

かくりよものがたりの人物が得意げに自分の答えを話すコマ
『かくりよものがたり』/藤崎竜、集英社。座談会の人物づくりの説明に掲載されたコマ。 出典

動機と、挑戦させることの食い違いを楽しむ

人物を作った後は、その人物に何をさせると面白いかを考えます。
藤崎さんは、人物を大きな舞台に立たせたらどう反応するか、動機と挑む目標が離れていたらどうなるかを考えています。
座談会で挙げた、漬物を作りたいからバンドをするという例は、説明用の仮の人物です。
どうして漬物とバンドがつながるのかという疑問が、その人物をもっと知りたい気持ちにつながります。

かくりよダイブと叫んだ人物が水中で驚いているかくりよものがたりのコマを使った図版
『かくりよものがたり』のコマを使った座談会の説明図版/藤崎竜、集英社。 出典

人物がどう反応するかを大事にする話は、田中芳樹さんとの対談にもあります。
藤崎さんは『銀河英雄伝説』のラインハルトについて、怒りや喜びを豊かに表すところがよく、幼年期から少年期を描く際には、毎話一度は怒らせようと考えていたと話しました。
人物の性格を説明するだけでなく、実際に感情が出る場面を描こうとしていたのです。

まとめ

漬物を作りたいという願いは分かるのに、どうしてバンドなのかは気になる。
藤崎さんの例には、読者が人物の望みを理解することと、その先を知りたくなることの両方があります。
人物の目的を決めたうえで、どんな出来事に巻き込むかを考えるという助言は、人物を理解させながら、驚きも作る方法なのです。
藤崎作品でも、人物が語る望みと、その人物に起こる出来事を見比べると、描き手の工夫を楽しめます。

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