『天』同じ騒動を赤木と僧我はどう利用したのか――気づいた坂口も逃げられなかった理由

四暗刻・字一色・大三元を宣言する赤木 天 天和通りの快男児
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第5巻。

東西戦の初戦で、原田が健にドスを突き出す。
別の卓でも、その騒ぎの間に勝負が動いていた。
僧我と赤木は、河から牌を拾って役満を仕掛ける。
健の卓で起きた事件が、ほかの二卓でも敗退者を出す隙になったのである。

三卓で初戦のビケ殺しを打つ東西の雀士たち
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第5巻。

二人の仕掛けを受けた金光と坂口の反応は、同じではない。
金光は僧我に和了されてから、騒ぎの中で牌を拾われたと気づく。
坂口は赤木の不正を疑い、振り込まないように打っていた。
赤木の怖さが表れるのは、坂口が警戒を始めた、その先だ。

僧我は、金光が目を離した一瞬を使う

この初戦は、半荘の最下位が脱落する「ビケ殺し」である。
僧我のいるB卓と、赤木のいるC卓は、騒動の前にはまだ誰が脱落するか分からない状況だった。
僧我は原田と健の騒ぎの中で河から牌を拾い、六索を四暗刻単騎でロンする。
その直撃で金光が飛び、B卓の勝負が終わる。

騒ぎの間にも河から牌を拾った僧我
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第5巻。

金光は、皆が騒ぎに気を取られた隙を僧我に使われたと振り返る。
金光が僧我の不正を理解した時には、すでに四暗刻を振り込んでいた。
健の負傷に注意が向く場面でも、僧我は自分の卓で勝負を終わらせる手を作っている。
僧我の仕掛けは、金光が警戒し直す前に決着してしまう速さを持っていた。

坂口は赤木の不正に気づき、振り込みを避ける

赤木の卓では、坂口が河の乱れに気づく。
騒ぎの中で牌を抜けるのは赤木だと考えた坂口は、赤木の捨て牌に合わせて切ることにする。
赤木がすでに捨てた牌なら、赤木にロンされる危険を避けられるからだ。
坂口は、赤木が和了する前に、不正への警戒を始めていた。

原田のドスを左手で受けた健
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第5巻。

赤木がツモを宣言しても、坂口はまだ持ちこたえられると考える。
坂口は親なので、子の赤木が役満をツモれば、一万六千点を払う。
大きな失点ではあるが、坂口の計算では、それでも飛ばずに済む。
振り込みを避け、ツモの支払いを受け入れることで、坂口は初戦の脱落を防ごうとしていた。

赤木は、坂口が耐えられる打点まで越える

赤木が示した手は、四暗刻だけではなかった。
字一色と大三元も重なった三倍役満、九万六千点である。
親の坂口が払うのは、一万六千点の三倍にあたる四万八千点。
坂口は赤木に振り込まずに済んでも、ツモの支払いで飛んでしまう。

四暗刻・字一色・大三元を宣言する赤木
『天 天和通りの快男児』福本伸行、第5巻。

坂口は赤木が牌をすり替えたと疑っていた。
坂口は、その手に三つの役満が重なっているとは想定していなかった。
普通の役満なら耐えられる、という判断を、赤木の三倍役満が越えてくる。
赤木は騒ぎの隙を使ったうえで、坂口が選んだ守り方でも脱落する打点を出したのである。

僧我に敗れた金光は、仕掛けに気づくのが遅かった。
赤木に敗れた坂口は、仕掛けに気づいてからも逃げられなかった。
金光は気を取られた隙を突かれ、坂口は警戒した後の計算を越えられた。
坂口の警戒を描いてから三倍役満を明かすことで、この場面の赤木は、ただ派手な役を和了する以上の怖さを見せている。

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